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おさかな情報 No.34  2006年 4月


2006年度 第1回展示テーマ   

    タイ型魚類
 
  
  
        
目      次
   はじめに ・・・・・・・・・・・ 1
    タイ型魚類とは ・・・・・・・・ 2
    水産上重要なタイ型魚類 ・・・ 4
    築地市場に入荷するタイ型魚類 ・ 6
    築地市場おさかなニュース
     「築地市場の甲殻類T 
         ボタンエビの仲間」・・ 11
    次回の展示テーマ ・・・・・  12


 
         展示の様子  
 
   
クロダイ  ゴウシュウマダイ    イトヨリダイ
  
はじめに

 タイ科およびイトヨリダイ科、フエフキダイ科の魚はタイ型魚類と呼ばれることがあります。マダイ・チダイ・キダイ・クロダイ・イトヨリダイ・ハマフエフキなど、私たちになじみの深い魚類か多く含まれています。このほか、日本で流通しているタイ型魚類にはゴウシュウマダイ・カナリーチダイ・ヨーロッパマダイなどのように、ニュージーランド・西アフリカ・アルゼンチンなどから輸入されるものもあります。

 展示では、築地市場に入荷する種類を中心に、タイ型魚類を標本とパネルで紹介します。

      


   タイ型魚類とは


 タイ科およびイトヨリダイ科、フエフキダイ科の魚はタイ型魚類と呼ばれることがあります。タイ型魚類は一般に次のような特徴を持っています(赤崎、
1962)。


形態的な特徴:

 体は楕円形で大いに側扁(左右に平たい)し、休高はふつう高い
 背鰭の棘条部と軟条部の間に欠刻(けっこく:切れ込み)がない
 腹鰭は胸位(胸の位置)で、1棘条5軟条
 背鰭は10-14棘条9-16軟条、背鰭3軸条7-16軟条
 尾鰭は一般によく分岐する
 臼歯(きゅうし:臼(うす)のような歯)や門歯を持つものが多い
 脊椎骨数は10(腹椎骨)+14(尾椎骨)など

生態的な特徴:
 世界の温帯や熱帯に広く分布し、内湾から大陸棚にいたる沿岸性
 大部分の種類が肉食性など


タイ科

  体は梢円形や丸く、体の幅は狭くなっています。世界に100種以上(日本に13種)。全長1mをこえるものもいますが、多くの種類は全長30〜50cmです。
世界の温帯から熱帯域に生息します。日本では北海道から沖縄まで分布。





イトヨリダイ科

 体は細長く、体色は赤色から青緑色。世界に約62種(日本に19種)。全長60cmを超える種類もいます。

 インド・西太平洋の沿岸浅海域からやや深い海域に生息します。日本では琉球列島周辺海域に多く分布します。



フエフキダイ科


 世界に39種(日本には27種)。全長1mを超える種もいます。

 全世界に分布しますが、インド・太平洋の亜熱帯から熱帯海域が主な生息域です。日本では琉球列島に多く分布します。



  水産上重要なタイ型魚類

 タイ型魚類の2002年の漁獲量は102.9万トンでした。これは世界の全漁獲量9300万トンの約1.1%にあたります。その内訳は、イトヨリダイ科が56.4万トン、タイ科が36.5万トン、そしてフエフキダイ科が10.1万トンです。

 また、多くのタイ科魚類では養殖が行われています全生産量15.6万トン、全世界の養殖生産量の0.4。主なものはマダイ(7.3万トン(2002)、主に日本)とヨーロッパヘダイSparus auratus (7.7万トン、主にギリシャ、トルコ、スペインです。
 2002年の漁獲量が5000トン以上の種類は以下のとおりです(和名、学名、漁獲量)。

 


タイ科



  1.ニシキダイ Pagellus erythrinus 5008トン

 2.アサヒダイ  Pagellus bellottii 7651

 

      ニシキダイ     アサヒダイ


 3.アフリカチヌ属として Diplodus spp. 8174

 4.キダイ属として Dentexspp.13243

 5.メジナモドキ  Spondyliosoma cantharus 5861

 6.インドダイ Argyrops spinifer 5124   

 
   メジナモドキ
                  

                   インドダイ

 7.ヨーロッパマダイ Pagrus pagrus 5975

 8.ゴウシュウマダイ Pagrus auratus 10948

 9.マダイ      Pagrus major 24348

 10.マダイ属として   Pagrus spp.  10702

 



 

 11.ヨーロッパヘダイ Sparus aurata 9339

 12.アフリカダイ   Boops boops  27396
   
     ヨーロッパヘダイ
   
       アフリカダイ

 

イトヨリダイ科

 13.イトヨリダイ

   Nemipterus virgatus 309392トン

    
      イトヨリダイ


参考資料                                     

赤崎正入.1962.タイ型魚類の研究 形態・系統・分類および生態.京都大学みさき臨海研究所特別報告.

中坊徹次・望月賢二()1998 日本動物大百科 魚類 平凡社,東京.

FA0.2004.FAO Yearbook Fishery Statistlcs Capture productlon FAO Flshery Series(66).

FAO2004.FAO Yearbook.Fishery Statistlcs, Aquaculture production.FAO Fishery Series (67).




                                


築地市場に入荷するタイ型魚類

 タイ科魚類は日本近海では13種しか見られませんが、世界では約100種が知られています。ほとんどの種類が食用として漁獲されています。以前は日本にも海外のタイ類が多く輸入(または日本船が漁獲)されていましたが、引き出物としてのタイ類の需要が減ったため、最近では輸入が少なくなりました。

 イトヨリダイ科魚類は日本近海で漁獲対象となっているのはイトヨリダイとソコイトヨリの2種だけですが、東南アジアからインド洋にかけては種類も豊富で、すり身の原料として輸入もされています。

 フエフキダイ科魚類は本州以北ではなじみがありませんが、温暖海域では大型の白身魚として重要です。

 築地市場に10年間で入荷したタイ型魚類は32種でした(前ページ参照)。ここでは、水産上重要なタイ型魚類のうち代表的なものについて紹介します。なお生産量は2003年(国外のものは2002年)、輸入量は2003年、築地市場入荷量2003年のものです。

                            
 
築地市場に入荷したタイ型魚類
      〇…ふつう △…少ない ×…まれ
                            

タイ科

 ○ マダイ         日本各地       生鮮
 ○ ゴウシュウマダイ   ニュージーランド   生鮮・冷凍
 ○ チダイ         日本各地       生鮮
 ○ カナリーチダイ    西アフリカ       冷凍
 ○ ヘダイ         日本各地       生鮮
 ○ クロダイ        日本各地       生鮮
 ○ キチヌ         瀬戸内海       生鮮
 △ キダイ         九州          生鮮
 △ キビレアカレンコ   小笠原         生鮮
 △ アンゴラレンコ     西アフリカ       冷凍
 △ ヨーロッパマダイ   アルゼンチン     冷凍
 × オーストラリアキチヌ  オーストラリア   生鮮
 × インドダイ       アラブ首長国連邦  生鮮
 × マルダイ        西アフリカ       冷凍
 × ヒツジダイ       北アメリカ西岸     生鮮
 × ディブロドゥス     西アフリカ       冷凍
 × アサヒダイ       西アフリカ       冷凍
 × ダブルバーシーブリーム アラブ首長国連邦   生鮮

イトヨリダイ科
 ○ イトヨリダイ      本州中部〜東南アジア 生鮮・冷凍
 ○ ソコイトヨリ       本州中部〜九州     生鮮
 × シャムイトヨリ     アラブ首長国連邦    生鮮
 × タマガシラ       大分県          生鮮
 × アカタマガシラ     熊本県          生鮮

フエフキダイ科

 ○ シロダイ        小笠原         生鮮
 ○ メイチダイ       南日本         生鮮
 △ ハマフエフキ      南日本         生鮮
 △ ムネアカクチビ    小笠原         生鮮
 × フエフキダイ      南日本         生鮮
 × ノコギリダイ      小笠原         生鮮
 × イトフエフキ      南日本         生鮮
 × シモフリフエフキ   アラブ首長国連邦   生鮮
 × アマミフエフキ     小笠原          生鮮



マダイ


分 布:北海道南部〜九州、朝鮮半島〜中国沿岸〜東南アジア

大きさ:体長1m

漁 法:釣り、定置網、底曳網、養殖

生産地:漁獲:愛媛県、長崎県、山口県、福岡県

養殖:愛媛県、三重県、熊本県、長崎県

生産量:漁獲量:14541トン 養殖量:83002トン

輸入量:統計資料はありませんが、中国、韓国から輸入されています。

利用法:刺身、寿司、塩焼、蒸焼き、粕漬、煮付け、鯛めし、椀だね、兜(かぶと)煮、酢の物、茶漬け、卵巣

生 態: 水深100m付近の海底近くにすみ、甲殻類や貝類、小魚などを食べます。産卵期は4〜7月で、大きな湾や内海の入口など深場から急に浅くなる岩礁で産卵します。浮遊性の卵を200万〜2300万粒産みます。ふ化した仔魚は沿岸のアマモ場などで小動物などを食べて過ごし、成長と共に、沖合に移動します。1年で体長10cm220cm3年で28cm4年で32cmに成長します。寿命は10年以上。

備 考: 桜が咲く時期のマダイの雌は「さくらだい」と呼ばれ珍重されます。

 マダイの鼻孔(鼻の孔)は天然のものでは左右に2つづつあります。ところが、養殖されたものでは多くの場合、前後の鼻孔を隔てる膜が発達せず、鼻孔が1つのままとなってしまいます。

 養殖のマダイをさばくと、筋肉の中に黒い筋が天然のものより多く入っていることがあります。これは養殖生簑(いけす)が、天然のマダイの生息水深より浅い、水深1020mにあるためです。つまり、浅い所では光の影響で毛細血管のまわりの黒色素胞が黒く見えるのです。養殖場では、この黒い筋を減らすために、生簑に黒いシートをかけるなどの工夫がなされています。


ゴウシュウマダイ






分 布:オーストラリア南部、ニュージーランド

大きさ:体長7Ocm

漁 法:釣り、底曳網

生産地:ニュージーランド

生産量:10048トン

輸入量:582トン

利用法:マダイと同様

生 態: 水深2OOm以浅の海底近くにすみ、底棲動物や小魚を食べます。産卵期は1O1(南半球の春から初夏)で、沿岸の水深2O7Omで産卵します。 1O万〜数百万粒の浮遊性の卵を産みます。 1年で体長1Ocm2年で15cm4年で22cmに成長します。寿命は6O年前後。

備 考: マダイによく似ていて、マダイより体色がやや薄いこと、成熟した雄の頭部が大きく変形することなど以外、あまり遺いがありません。最近の遺伝子に基づく研究でもマダイとの差が小さいことが示され、同種と考える研究者もいます。1971年ごろから輸入されるようになり、築地市場にも航空便で送られて来た鮮魚が並びます。ここ数年、入荷量は減っているようです。



チダイ



分 布:北海道南部〜九州、東シナ海、フィリピン

大きさ:体長30cm

漁 法:釣り、延縄

生産地:長崎県、山口県、島根県、福岡県

生産量:7171トン(キダイを含む)

利用法:刺身、塩焼、吸物

生 態: やや沖合の砂れき底や岩礁にすみ、底棲動物や小魚を食べます。産卵期は712月で、浮遊性の卵を産みます。1年で12cm2年で18cm3年で23cm4年で25cmに成長します。寿命は7年以上。

備 考: チダイの小ぶりのものは「かすご」と呼ばれます。また、関東では釣り人などはチダイを「はなだい」と呼ぶことがあります。
 マダイとよく似ていますが、鯉蓋(さいがい:えらぶた)の縁は上半分ほどが赤いこと、尾鰭後縁が黒くないこと、背鰭(しりびれ)の軟粟散が9(マダイでは8)であること、背鰭第2、3軟粟が長く伸びることで区別できます。



カナリーチダイ


分 布:地中海〜アンゴラ、カナリー諸島

大きさ:体長90cm

漁 法:底曳網

生産地:西アフリカ

利用法:塩焼

生 態: 水深50100mの岩礁にすみ、甲殻類や二枚貝、小魚を食べます。産卵期は春から秋で、浅海の砂泥底で産卵します。2年で体長20cm成長します。

備 考: 西アフリカ産のものが冷凍で輸入されています。


ヘダイ



分 布:本州中部以南のインド・西太平洋温暖海域
大きさ:体長40cm

漁 法:釣り、定置網、底曳網
生産地:西日本
利用法:刺身、塩焼、煮付け
生 態: 沿岸からやや沖合の岩礁にすみ、底棲の小動物を食べます。産卵期は4〜6月で、浮遊性の卵を産みます。稚魚は河口域に入ることもあります



クロダイ




分 布:北海道〜九州、朝鮮半島南部、潮海、黄海、台湾

大きさ:体長60cm

漁 法:釣り、定置網、吾智網(ごちあみ)、刺網

生産地:広島県、愛媛県、兵庫県、愛知県

生産量:3776トン(ヘダイを含む)

利用法:刺身、洗い、塩焼、椀だね、煮付け

生 態:水深50m以浅の岩礁や藻場、砂泥底、河口などにすみ、底棲動物や海藻類を食べます。産卵期は春から夏で、浮遊性の卵を産みます。1で体長13cm2年で19cm3年で24cm4年で28cmに成長します。

寿命は1O年以上。成長にともなって性転換をします。体長9cmまでは未成熟、1O27cmでは雌雄同体ですが初め雄として機能し、翌年には大部分が雌になります。

備 考:関西では「ちぬ」と呼ばれ、磯釣の対象として人気があります。

 



キチヌ



分 布:本州中部〜九州、台湾、東南アジア、オーストラリア、アフリカ東岸

大きさ:体長55cm

漁 法:釣り

生産地:瀬戸内海

利用法:刺身、塩焼

生 態: 内湾や沿岸の岩礁にすみ、底棲の小動物を食べます。産卵期は910月。幼魚は河口域にも入ります。若魚はすべて雌雄同体で雄の機能を持っていますが、成魚になるころにはほとんどが雌になります。

備 考: クロダイに似ていますが脊鰭(しりびれ)が黄色く、「きびれ」などと呼ばれています。




キダイ



分 布:本州中部〜東シナ海、海南島

大きさ:体長40cm

漁 法:底曳網

生産地:東シナ海

利用法:刺身、塩焼、吸物、煮付け、小鯛笹漬け

生 態: 水深100200mの大睦棚縁辺部にすみ、主に甲殻類を食べます。産卵期は6月と11月で、浮遊性の卵を産みます。1年で10cm2年で14cm3年で18cm4年で21cmに成長します。寿命は9年。

備 考: 一般に「れんこ」、「れんこだい」と呼ばれます。



イトヨリダイ




分 布:本州中部〜東シナ海、南シナ海

大きさ:体長36cm

漁 法:底曳網、釣り

生産地:九州

利用法:刺身、照焼き、塩焼、椀だね、味噌漬

生 態: 水深50〜100mの砂泥底にすみ、甲殻類や小動物、小魚などを食べます。産卵期は4〜8月で、浮遊性の卵を産みます。1年で11cm、2年で20cm、3年で28cm、4年で34cmに成長します。寿命は6年以上。

ソコイトヨリ



分 布:本州中部〜オーストラリア北部

大きさ:体長30cm
漁 法:釣り、底曳網
生産地:九州
利用法:刺身、照焼き、塩焼、椀だね、味噌漬
生 態: 水深35300mの砂泥底にすみ、甲殻類や小魚、頭足類などを食べます。産卵期は71O月です。雌雄同体です。
備 考:市場などでは「ばけいとより」と呼ばれることがあります。イトヨリダイよりも評価が高いことがあります。



メイチダイ


分 布:本州中部〜南シナ海

大きさ:体長30cm

漁 法:釣り

生産地:伊豆諸島、四国、九州
利用法:刺身、塩焼、椀だね
生 態: 
水深200m以浅の大陸初縁辺部の砂れき底にすみます。産卵期は5〜7月で、浮遊性の卵を産みます。

備 考:「ぎんだい」と呼ばれるシロダイは本種に近縁です。

 

フエフキダイ類





分 布:本州中部〜インド・西太平洋の温暖海域

大きさ:体長2085cm

漁 法:釣り

生産地:九州、小笠原、沖縄

利用法:刺身、塩焼、椀だね

生 態: 浅海から水深70mの岩礁やサンゴ礁、アマモ場、砂泥底などにすみ、底棲の小動物などを食べます。雌から雄への性転換をします。ハマフエフキでは、産卵期は211月で、浮遊性の卵を産みます。寿命は20年以上。

備 考: 国内ではハマフエフキやホオアカクチビ、フエフキダイが多く漁獲されています。沖縄ではハマフエフキの養殖も行なわれています。サンゴ礁域にすむキツネフエフキ、ムネアカクチビなどはシガテラ毒を持つことがあるので注意が必要です。



参考資料

落合 明・田中 克 i998.新版 魚類学(下)改訂版 恒星社厚生閣,東京.

島本信夫.200i.マダイの生物学(i)発祥と分散.海洋と生物,234)・368-376.

島本信夫.2004.マダイの生物学(9)成長と成熟.海洋と生物,266:557-568.

島本信夫 2005.マダイの生物学(i0)漁業と資源.海洋と生物,273:280-29i

水産庁加工流通課.2004 水産貿易統計 平成i4

鈴木克美 i992.ものと人間の文化史69 鯛(たい).法政大学出版局、東京

多紀保彦・奥谷喬司・近江 卓(監).2000.食材魚貝大百科 第3巻 イカ・タコ類ほか+魚 平凡社,東京.

東京都.2004.平成i5年 東京都中央卸売市場年報 水産物編

中坊徹次(編)2000.日本産魚類検索 全種の固定 第2版 東海大学出版会,東京

農林水産省統計情報部.2005 平成i5年 漁業・養殖業統計年報

畑中 寛.i990 ゴウシュウマダイ.p 277-279 尼岡邦夫ほか.ニュージーランド海域の水族.海洋水産資源開発センター,東京.

Carpenter,K E G R Allen. i989.Emperor fishes and large-eye breams of the world.FAO Fish Synop,(i259

FA0.2004 FAO Yearbook Fishery Statistics, Capture Production.FAORshery Series, 66

Russell,B.C.i990 Nemiptend fishes of the world.FAO Fish.Synop..(i25i2.


 築地市場おさかなニュース

築地市場の甲殻類 −ボタンエビの仲間

 築地市場にはさまざまなエビやカニが入荷します。今回はボタンエビの仲間を紹介します。
寿司などでなじみのある「あまえび」や「ぼたんえび」と呼ばれるエビはタラバエビ科のエビです。
タラバエビ科のエビは世界で140種、日本からは約35種が知られています。すべて寒流域や深海にすみます。ほとんどの種類は性転換し、生後5年ぐらいまでは雄、その後は雌になります。抱卵期は長く11〜18ヵ月に及びます。句は冬とされますが、1年を通して味は大きく変わりません。どの種類も篭(かご)や底曳網で漁獲されています。生鮮または冷凍で周年流通し、まれに氷を浮かべて温度を下げた海水に入れ、生きたまま売られていることもあります。




  
築地市場に入荷したタラバエビ類
 
      ○…ふつう △…少ない ×…まれ

-------------------------------------------------------------------------------
○  トヤマエビ      ぼたんえび  日本海、北海道、ロシア
○  モロトゲアカエビ   しまえび     北海道
○  ボタンエビ      ぼたんえび    常磐
△  ヒゴロモエビ     ぶどうえび    三陸
×  スナエビ                  北海道
×  ホッカイエビ     ほっかいしまえび 北海道
○  ホッコクアカエビ   あまえび     日本海、北海道
×  ジンケンエビ                九州
○  ホンホッコクアカエビ あまえび     ノルウェー
○  スポットシュリンプ             カナダ
×  ストライプシュリンプ            アラスカ

-----------------------------------------------------------------------------



ホッコクアカエビ

富山湾:韓国東岸〜ベーリング海〜カナダ西岸の水深深400〜600mに分布します。体長13cmになります。築地市場でもっともよく見かけるタラバエビ科のエビです。標準和名のホッコクアカエビより「甘エビ」といった方が、一般には通じるかもしれません。国内では日本海や北海道沿岸で漁獲されます。これまで同種と考えられていた北大西洋のものは、1992年に別種(ホンホッコクアカエビ)とされました。


トヤマエビ

福井県:韓国東岸〜北米ワシントン州の水深150〜300mに分布します。体長25cmになります。ホッコクアカエビに次いで多く見られるエビです。築地市場では「ぼたんえび」と呼ぶことが多いようです。
体の縞模様から「とらえび」とも呼ばれます。



モロトゲアカエビ

福島県:韓国東岸〜サハリンの水深200〜450mに分布します。体長14cmになります。築地市場では「しまえび」と呼ばれることが多いようです。


ボタンエビ

高知県〜北海道の噴火湾の水深300〜500mに分布します。体長13cmになります。トヤマエビを「ぼたんえび」と呼ぶことがあり、これと区別するため「本ぼたん」と呼ばれることもあります。主に常磐から入荷します。


ヒゴロモエビ

銚子〜サハリンの水深230mに分布します。体長15cmになります。市場に入荷するほかのタラバエビ類が明るい赤色やオレンジ色をしているのに対して本種は暗赤紫をしているため「ぶどうえび」と呼ばれます。主に三陸沖で底曳網により漁獲されています。


輸入のタラバエビ類
                   
タラバエビ科のエビは世界で約44万トン漁獲されています。主な生産国はカナダ、グリーンランド、ノルウェー、アイスランドなどです。このうちロシアからトヤマエビ、カナダからスポットシュリンプ、ノルウェーからホンホッコクアカエビが輸入されています。


参考資料
 永尾 洋.1999.日本海の幸一エビとカニー.あしがら印刷,足柄.
、駒井智幸,1995.ホンホッコクアカエビ(新称).p254-257.岡村 収ほか(編).グリーンランド海域の水族.海
   洋水産資源開発センター,東京.
 多紀保彦・奥谷喬司・近江 卓(監).1999.食材魚貝大百科 第1巻 エビ・カニ類+魚.平凡社,東京.
 東京都.2004.平成15年 東京都中央卸売市場年報 水産物編.
 水島敏博・鳥澤 雅(監).2003.漁業生物図鑑 新 北のさかなたち.北海道新聞社,札幌.
 三宅貞祥.1982.原色日本大型甲殻類図鑑(I).保育社,大阪.
 FA0.2004.FAO Yearbook.Fishery Statistcs, Capture Production. FAO Fishery Series, (66).




 
次回の展示テーマ
 
       
魚の鱗   2006年7月1日〜9月30日

 魚にはマイワシやコイのように体が滑らかなものと、マダイのように触ると少しチクチクするものがありますが、これは鱗の違いによります。このように棘の有無をはじめ、鱗の形や構造にはふつう種(またはグループ)ごとに特徴があります。展示では、食用魚を中心に様々な魚類の鱗を標本とパネルで紹介します。


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