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はじめに
近年、牛・豚・鳥肉など畜肉類の利用が増えたとはいえ、私たち日本人の食生活にとって魚が重要な動物性食品の一つであることに変わりありません。食品としての魚については、高タンパク低カロリーの栄養価のほかに、最近ではDHA‐EPAなどの脂肪酸をはじめさまざまな成分の効能が明らかにされています。このほかにも、たとえば、魚はミネラル(カルシウム・リン・カリウムなど)の供給源、とくに現代の食生活において不足しがちなカルシウムの供給源として優れた食品でもあります。
ところで、魚には体を支えるために、たくさんの骨があります。このため、煮たり焼いたりして食べるとき、魚によっては骨が気になることがあるかもしれません。骨は、その有無や大きさ、強さが魚種により違うことがあるからです。
展示では、骨格標本とパネルによって、魚の骨紺みを紹介します。骨の形やある場所、大きさ、強さなどを知って、栄養豊かな魚をもっと楽しく、美味しく食べましよう。

マイワシの骨格 Yabumoto(1988)より

クロマグロの骨格 中村(1990)より

クロマグロの骨
魚には骨がある‐魚の骨組み

マアジの骨格 須田(1991)より
刺身や焼き魚で私たちになじみの深いマアジを例にして、魚の骨組み-骨格(と筋肉)-を考えてみます。
焼き魚や煮付けをきれいに食べた時、骨格を全体的にじっくり観察すると、マアジと比べて、マイワシのように骨が多いものから、カワハギのように骨の数が少ないものまでさまざまであることがわかります。また、同じ場所にある骨(同じ骨のこと)をよく比べてみても、形や大きさ、強さが魚によって違うことがわかります。
ここでは、魚を食べる時に知っていると便利な、魚の骨格(と筋肉)について説明します。

マイワシの骨格 Yabumoto(1988〉より カワハギ属の1種の骨格標本
頭骨
┃
┣神経頭蓋(脳・鼻・眼・内耳など中枢神経系や感覚器を保護する骨)
┃ 前頭骨・前耳骨・止耳骨・上後頭骨・基後頭骨など
┃
┗内蔵頭蓋(内蔵骨)(顎・鰓・舌などを支持・保護する骨)
顎弓(顎を支持)前上顎貝骨・主上顎類骨・歯骨など
口蓋骨、後翼状骨など(上顎内側の口腔を構成)
舌弓(舌を支持し、顎の開閉に連動)上言骨・下言骨・尾舌骨など
鰓弓(鰓を支待し、食べることや呼吸に関与)下鰓骨・上咽頭骨など
これら以外に頭の表面には、鰓を保護する骨(鰓蓋(さいがい、えらぶた)は、いくつかの薄い骨(主鰓蓋骨・前鰓蓋骨など)からできています)と眼のまわりに数個の骨(眼下骨)があります。
脊索と背柱(脊髄・脊索を保護。魚体の中心部を縦走し、体を支える骨) 最後部のいくつかの脊椎骨は変形して尾鰭を支持しています(尾骨)。一般に、
背骨や中骨といわれる骨です。これを囲むようにあるのが体側筋(背側筋と腹
側筋)で、ふつう食用としている“魚の身”といわれているところです。
付属骨格
┃
┣肩帯(胸鰭を支える骨)
┃ 上擬鎖骨(ぎさこつ)・擬鎖骨・鳥口(うこうこつ)・肩甲骨(けんこう
┃ こつ)など(「鎌(肉)」参照)。
┃
┣腰帯(腹鰭を支える骨)
┃
┗担鰭骨(背鰭・臀鰭・胸鰭の鰭条を支える骨) 遠位(近位)担鰭骨など
骨は、その有無や大きさ、強さが魚により違うことがあります。代表的な例 として肉間骨を紹介します。
ほとんどの硬骨魚類には肉間骨の1つである上肋骨がありますが、マイワシ
やコノシロなどのニシン類、カタクチイワシ類、ハモ・ウナギ・マアナゴなどの
ウナギ類などには、上肋骨以外に上神経骨・上椎体骨・筋骨竿(きんこっかん)* という肉間骨があります。食べる時に問題になるのはこれらの肉間骨です。
*これら3種のすべてか、またはいくつかの肉間骨があります。

カタクチイワシ Yabumoto(1988)より

ヨシノボリ Yabumoto(1987)より
この肉間骨があるため、魚によってば独待の調埋法があります。
ニシン・マイワシ 塩焼き:ふつう気にしない
コノシロ 寿司:(こはだ)酔を使うことで気にならない
ウナギ 溝焼き:焼く(さらに蒸す)ことで気にならない
マアナゴ 寿司:煮ることで気にならない
ハモ すべての料埋:骨切り
クロシビカマス 刺身:そぎ切りすると、ほとんど気にならない
(クロタチカマス類ですが、かなり丈夫な筋骨竿があります)
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私たちが刺身や煮付けなどで食べている筋肉は、体側筋(背側筋と腹側筋)ですが、もちろん、これ以外の筋肉も食べています。これらの筋肉は特別の名前で呼ばれる場合があります。いくつかを紹介します。
頬肉:眼の下側には、一般に「頬肉(ほおにく)」(「眼肉」ともいう)と呼ばれる一連の筋肉がありますが、これらは口を閉じることに関係しています。
たとえばメバルなどカサゴ類では眼の下側に棘のある大きな骨(眼下骨)があります。「頬肉」はこの骨の内側にあります。
鎌(肉):(マグロ類、ブリ類など)肩帯周辺の筋肉のこと。胸鰭を動かす筋肉もありますが、鎌(肉)の大部分は、上擬鎖骨に着いている背側筋と擬鎖骨に着いている腹側筋です。擬鎖骨に付着している筋肉は腹側筋の最前部ですから、その直後は「大とろ」ということになります(「大とろ」の直前にあることもあり、「鎌とろ」とも呼ばれます)。
顎肉:(マグロ類)、舌弓と擬鎖骨の間の筋肉(胸舌骨筋:口を開けることに関与)とその外側にある腹側筋(「鎌(肉)」の直前)を「顎肉」と呼んでいるようです。
脳天:(マグロ類)三崎では、はちのみ、頭身(とうみ)といいます。神経頭蓋の背部にある(上後頭骨隆起とせつじゆ隆起の間)、1対の細長い凹みに固着している背側筋です。一般に「中とろ」程度の脂ののりといわれていますが、骨格にしっかりと着くため、腱(筋(すじ)といわれるもので、硬タンパクであるコラーゲンが多い)がたくさんあります。
尾身(おのみ):(マグロ類)もともとクジラ類で使われる名称のようですが、マグロ類の料理として出されることがあります。マグロ類は尾柄部を使って高速で泳ぐため筋肉と脊椎骨を結ぷ腱がよく発達しています。尾身は、焼き物など加熱調理されると、腱の成分であるコラーゲンがゼラチンに変化して独特の食感を持ちます。
縁側:(カレイ類)背鰭と臀鰭の軟条を動かす筋肉(左右に動かす傾斜筋)は、特に「縁側」と称して珍重されます(Q&Aシート014「縁側」を参照)。

クロマグロ中村(1990)に加筆

ヒラメNorman〈1934)に加筆
参考資料
岩井保.1985.水産脊椎動物U魚類.恒星社厚生閣,東京,
須田有輔,1991.日本産マアジTrachurus japonjcusの骨格系.Bull.kitakyushu Mus.Nat.Hist.,10:53−89. 中村泉.1990.外部形態によるマグロ属魚類の分類学的研究.海洋と生物,12(5):364-371. Norman,J.R.1934.A systematic monograph of the flatfishes(Heterosomata).I.Psettodidae,Bothidae,Pleuronectidae.Brit.Mus.(Nat.Hist.),London. 他,
一4−
骨を楽しむ-「鯛の九つ道具」
江戸時代の後期に出版された岩崎潅園の「養浩館魚鳥図」(1807年)、奥倉辰行の「水族四帖」(1850年頃)と「水族写真」(1857年)には、鯛の骨格図が描かれます。これらの書物では、全体の骨格のほかに「鯛の九つ道具」と呼ばれる大龍・小龍・鯛中鯛など小骨の図や説明がついています。小骨を様々なものに見立てて楽しんでいたようです。奥倉辰行は「鯛の九つ道具」を持っていると、”物には不自由しないし、幸せにもなる”と昔から言われている」と書いています。「タイのタイ」を持っているだけでも幸せになるといわれているので *「鯛の九つ道具」を揃えたらもっと幸せになるかもしれません。 これは本当かどうかわかりませんが、「鯛の九つ道具」を探しながら食べる方が、「タイのタ イ」を探す時より、もっと、幸せな気分になることだけは間違いありません。なにしろ今度
は、”かま”だけではなく、鯛が丸ごと目の前にあるわけですから。
もちろん、魚類学では「鯛の九つ道具」という呼び方はありません。そこで、奥倉辰行の「水族写真」の”鯛名所之図”をもとに、「鯛の九つ道具」の正体を調べてみました。
三ッ道具(みつどうぐ:前から鍬(くわ)・鎌(かま)・熊手(くまで):上神経棘)
鯛石(たいせき:扁平石。ふつう耳石と呼ぶもの。聴覚や平衡感覚に関係しています。奥倉によれば、「この石の大きい魚は浮ばず、驚きやすい。これは魚の心、あるいは耳である。」)
大龍(だいりゆう:前鋤骨.中篩骨.側篩骨.副蝶形骨)小龍(こりゆう:準下尾骨)
鯛中鯛(たいちゆうたい:「タイのタイ」のこと:肩胛骨.烏口骨)
鍬形(くわかた:第一神経棘)
竹馬(ちくば:第2尾鰭椎前脊椎骨の血管棘)
鳴門骨(なるとほね:一部が肥大した血管棘。全ての鯛にあるわけではありません。奥倉によれば、「本朝食鏡」に”瘤鯛(こぶだい)といい、鳴門梅峡を泳ぐと生
じる”とあるとのこと。)
鯛之福玉(たひのふくだま:等脚類の一種タイノエ、口内寄生虫:奥倉によれば、「随観写真」に”・・・長州では、・・・鯛の如く賞味する”とあるという。)
* 「おさかな情報 No.3」を参照。 「タイのタイ」の作り方も書いています。

「水族写真 」(奥倉辰行1857)より

鯛の九つ道具 標本
(おさかな情報 No.5より)
骨格標本の作り方
<用意するもの>
廃水パイプ用洗浄剤(花王のパイプスルーが最も良いようです)
鍋(浅いものがよい)
ガーゼ(なければ、手ぬぐい、ふきんなど)
容器(タッパー、洗面器など)
ピンセット(なければ、竹串、つまようじ、歯ブラシなど)
ビニール手袋
〈注意)パイプスルーを扱うときは必ずビニール手袋を使用する。
<作り方>
(1)生の魚をガーゼで包み、鍋で5分ほど煮る。
(2)容器に移し(熱いので火傷に注意)、魚を崩さないように気をつけてガーゼの包みをあける。
(3)ピンセットで注意深く身をはずす
(本書の骨格図などを参考に、骨のある位置に気をつける。特に、頭部は小さな骨が多いので要注意)。
(4)おおまかに身をとったら、ぬるま湯を骨が隠れるぐらいに入れ、パイプスルーを入れる(20pぐらいの魚で1袋の半量ぐらい。身の溶け具合などを見ながら加減する)。
(5)骨がはずれたら(煮ただけでとれてしまう場合もあります)、軽く水 洗いし、
骨についている身をきれいにとる。
(6)平らな容器に、骨のあった位置のとうりに並べ、乾燥させる。
(7)濃い色の画用紙などに、接着剤で貼り付ける。
(8)タッパーなどで保存する(虫よけを入れる)。標本には、年月日、 産地、大きさなどのデータを付けておきましょう。
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参考資料
伊藤恵夫.1992.廃水パイプ用洗浄剤を利用した小動物骨格標本作製法.化石研究会誌,25:43−44
一6一
骨も食べる・骨の栄養と食べ方
カルシウムは骨の重要な構成成分ですが、血液などの体液にも含まれ、様々な生命活動に関係しています。体液中のカルシウムが不足した場含には骨のカルシウムが補うようになっています。しかし、カルシウムの摂取不足が長期にわたると骨がもろくなったり(骨粗しよう症など)、高血圧や脳卒中、心筋梗塞:の危険因子になるほか、ストレス増大などつながるといわれています。
そこで、カルシウムを多く含む商品として魚が注目されているわけです。カルシウムは骨に多く含まれているので(図)、特に骨ごと食べる加工品が重要です。カルシウムは吸収されにくいミネラルですが、魚にはカルシウムの吸収を促進させるビタミンDもたくさん含まれています。とくに、内臓には(「青もの」といわれるイワシ類やサバ類には特に)多く含まれます(表)。小魚を丸ごと食べるのが良いといわれる理由です。
表をみると、イワシ丸干し・煮干し、ドジョウ、ワカサギやハゼの佃煮などのように骨ごと食べる食品のカルシウム量が多いことがわかります。

カルシウムの体内分布(魚体量100g当り)佐藤(1994)より一部)
カルシウム含量(mg/100g当り) 四訂日本食品標準成分表(1982)より
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マイワシ(三枚おろし) |
70 |
たたみいわし(全魚体) |
970 |
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サバ(三枚おろし) |
22 |
ワカサギ佃煮(全魚体) |
1000 |
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ドジョウ(全魚体) |
880 |
シシャモ生干し(全魚体) |
440 |
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ワカサギ(全魚体) |
750 |
ハゼ佃煮(全魚体) |
1800 |
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イカナゴ煮干し(全魚体) |
580 |
和牛(もも肉脂身4%付き) |
3 |
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佃煮(全魚体〉 |
550 |
豚(もも肉脂身6%付き) |
5 |
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イワシ丸干し(全魚体) |
1400 |
鶏(もも肉) |
4 |
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煮干し(全魚体) |
2200 |
牛乳 |
100 |
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しらす干し(全魚体) |
530 |
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表以外で骨ごと食べる加工品をあげてみます。
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フカ鰭(中華料理で有名) |
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エイ鰭(ガンギエイ類の胸鰭の干物。珍味) |
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氷頭鱠(ひずなます)(サケ類の頭骨(軟骨)の酢の物) |
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サケの中骨の缶詰(サケ類の脊椎骨の缶詰) |
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こいこく(コイを筒切りにして味噌で柔らかくなるまで煮たもの) |
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コイの佃煮 |
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フナの甘露煮、すずめ焼き |
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すくがらす(沖縄地方の名産。アイゴ類の幼魚の塩辛) |
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シロウオの踊り食いや佃煮 |
参考資料
佐藤守.1994.ピタミン、ミネラル.鴻巣章二監,阿部宏喜・福家眞也編「食の科学」・朝倉書店,東京,鈴木平光.知って得する魚の話.大日本水産会,東京.
一7一
主な食用魚の骨組み
ここでは、私たちが日頃食べることの多い魚の骨組みを中心とした特徴、その骨に関わる利用の仕方や注意事項などを紹介します。
ウナギ・マアナゴ・ハモ
特徴:脊骨の数が多い(ウナギ:ll2〜119、マアナゴ:142〜148、ハモ:142〜159)、肉間骨が発達している、鰭に硬い棘がない、背鰭と尾鰭と臀鰭はつながる 利用:ウナギ、マアナゴ、ハモはどれもさばく時、開いたらまず背骨をとります。この後、ハモだけは“骨切り”をします。筋肉の中に入っている肉間骨を切るのです。ウナギやマアナゴにも肉間骨はありますが、ふつう蒲焼きや姿煮にする大きさのものでは、食べて気になるほど肉間骨が強くないため、骨切りをしません。ところで、小ぶり(ウナギやマアナゴの食用サイズ)のハモは味がよくないのか利用されません。

ウナギの骨格
ハモの骨
マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ
特徴:小骨が多い、骨が軟らかい、鰭には硬い棘がない(3ぺ一ジ参照) 利用:イワシ類は丸ごと食べる機会の多い魚です。しらす干し、チリメン、たたみいわし、ごまめ(田作り)、煮干し、丸干し、目ざし、つみれなど、どれも頭から食べられるので、カルシウム不足を補う健康食品です(7ぺ一ジの表を参照)。
マイワシの骨は手でさばけます。頭と内臓を取り除いたあと、肛門のところから親指を入れて、尾部まで裂きます。次に、背骨と身の間に指を入れ、前の方から尾に向かって背骨をはずしていきます。
 
マイワシの骨格 目ざし
サケ・マス類・アユ
特徴:骨が軟らかい(軟骨部分が多い)、鰭に硬い棘がない 利用:サケ・マス類は体が大きくて歩留まりもよく(身の部分が多い)、食べやすい魚です。また、骨も軟骨部分が多く、食品として利用されています。たとえば、「氷頭なます」は頭部の軟骨を薄切りにしたもの、また、「中骨の缶詰」ば高圧、高温で処理して軟らかくした背骨の缶詰です。 夏に渓流で食べるニジマスやアユの塩焼は格別です。焼きたての魚の身を何ヶ所か軽く箸で押さえ、頭を持って引き抜くと、骨はするすると身から外れます。

サケの骨格
メバル・カサゴ
特徴:骨が硬い、鰭に硬い棘がある
利用:メバルやカサゴの仲間には、背鰭や臀鰭の強くて硬い棘があるほか、頭部にたくさんの棘を持つものがいます。中には、背鰭の棘に毒がある魚もいるので、調理の時は十分な注意が必要です。硬い骨も、唐揚げなどにして熱を加えることで食べられるようになります。また、肉間骨は少なく身離れもよいので、食べやすい魚です。

カサゴの骨格
メバルの骨
マアジ
特徴:基本的な骨の数と形、背骨の数24(2ぺ一ジ参照)
利用:肉間骨を取らずに細かく刻む「たたき」、小ぶりのものを丸ごと食べられる南蛮潰けなどがあります。臀鰭の前方にある棘は小さいですが、大変硬いので注意しましょう。
マダイ
特徴:基本的な骨の数と形、背骨の数24(5ページ参照)
利用:タイ類は骨が硬いので、骨を食べることはありませんが、兜煮やうしお汁など頭部を使った料理があります。これらの料理では、頬や眼のまわりなどの骨の間にある身を食べます。

タチウオ
特徴:神経棘、血管棘、(近)担鰭骨の先端が鋭い、背骨の数が多い(160〜180)
利用:細くとがった骨が多いですが、身離れがよいので、注意すれば食べやすい魚です。神経棘や血管棘(脊椎骨の上下にある棘)の一部が変形して球状に膨らんでいることがありますが、マダイの鳴門骨と同じく、その原因はわかっていません。

タチウオの骨格
マグロ類
特徴:骨が頑丈(1ページ参照)
利用:ふつう小売店で売られている切身には骨がないので、マグロ類の骨を見る機会は少ないかもしれません。三崎には、背骨の間にある組織(「骨髄」と呼ばれているようですが、脊索です)を食べさせる店があります。
ヒラメ・カレイ類
特徴:背鰭と臀鰭の鰭条が多い(背鰭61〜109、臀鰭48〜84)
利用:肉間骨がなく身離れがよいので、食べやすい魚です。唐揚げや小型の魚の干物は骨まで食べられます。「縁側」は背鰭や臀鯖を動かす筋肉です(Q&AシートNol4参照)。

ヒラメの骨格
カワハギ・フグ類
特徴:骨が少ない
利用:骨が少なく身離れが良いので、食べやすい魚です。背骨や頭の部分は唐揚げで食べられます。鰭は乾燥したものをあぶって、鰭酒(ひれざけ)に使います。カワハギ類の一部とフグ類には毒があるので素人の調理は危険です。

トラフグの骨格
参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正倫.1987.材料料理大事典魚介I‐U.学習研究社.落合明(編).1993.魚類解剖大図鑑.緑書房,東京.八杉龍一ほか(編).1997,岩波生物学辞典 第4版.岩波書店,東京.
一10一
−−−−−−−− 築地魚市場おさかなニュース −−−−−−−−
無脊椎動物の骨
水産動物のうち、魚やクジラなど背骨(脊椎骨)を持つ動物(脊椎動物)以外のものは無脊椎動物と呼ばれています。体を支える背骨がないからです。そのかわりに、外骨格を持つものがいます。外骨格は体を支えるほか、外敵から身を守るためにも役立ちます。一方、体が重くなるので陸上ではあまり大きなものはみられません。
軟体動物(巻貝、二枚貝、イカ、タコなど)
軟体動物の外骨格は貝殻です。貝殻は主に炭酸カルシウムからなる3層構造になっています。この炭酸カルシウムは内臓を包む外套膜(がいとうまく)から分泌されます。ウミウシやタコなど、全く貝殻を持たないものもいます。イカは胴体の内側に貝殻の名残りがあります。コウイカの仲間にはりっぱな貝殻(甲またはフネ)があります。ヤリイカやスルメイカではプラスチックの紐のようになっています。
  
サザエ ホタテガイ コウイカ
節足動物(フジツボ、アミ、エビ、ヤドカリ、カニ、シヤコなど)
節足動物の外骨格は甲皮といいます。甲皮は主にキチン質からなり、カルシウムを含む厚くて梗い甲羅になっています。ほぼ全身を包んでいるので、外敵から身を守るためには有効ですが、軟体動物の貝殻と異なり、成長するたびに脱皮しなければなりません。なお節足動物のなかでフジツボ類だけは石灰質の殻を持っています。
  
ミネフジツボ イセエビ ズワイガニ
棘皮動物(ウニ、ナマコなど)
ウニ類の外骨格は、炭酸カルシウムに石灰分が沈着した骨板がつながった殻です。殻の周囲には同じ成分でできた棘があります。硬い殻とたくさんの棘で身を守るウニですが、ネコザメやイシダイなどには殻を噛み砕かれてしまいます。 ナマコ類は一見、骨がなさそうに見えますが、体壁の中に小さな骨片がたくさんあります。骨片は真皮からなる体壁を補強する働きをしています。骨片の形は、種によって決まっています。
 
エゾバフンウニ マナマコとムラサキクルマナマコの骨片

原索動物(ホヤ)
ホヤ類には骨がありません。やや硬い外皮に包まれていますが、これもセルロース(植物の細胞壁の成分)からなるもので骨格では
ありません。ホヤ類の幼生はオタマジヤクシのような形をしています。幼生には背索(せきさく)と呼ばれる、中軸に沿った神経の支
持組織があって、これが脊椎の元となったと考えられています。(脊椎動物と原索動物をあわせて背索動物といいます。)
マボヤと幼生
参考資料
荒川好満.1990,なまこ読本.緑書房,東京. 奥谷喬司(編).1987.水産無脊椎動物U 有用・有害種各論.恒星社厚生閣.
八杉龍一ほか(偏).1997.岩波生物学辞典第4版.岩波書店,東京. 西村三郎(編).1995.原色検索日本海岸動物図鑑U.保育社,大阪.
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次回の展示テーマ
「 輸入魚 」
2003年10月1日〜12月30日
日本で食用にされる水産物の約50%は外国から輸入されています。築地市場にもたくさんの輸入魚が並びます。展示では、輸入魚を標本とパネルで紹介します。また、最近、問題となっている輸入魚の名称についても考えてみます。(水産庁の「魚介類の名称のガイドライン」も紹介します。)
−12一
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