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おさかな情報 No.20   2002年10月

2002年度第3回展示テーマ    魚の旬 

                              クロダイ
                             
                            ホシガレイ
                     
                          サケ

             目      次
はじめに.............. 1 
魚の味を考えるー田中茂穂「食用魚の味と栄養
 「珍味」........... 2
  
築地市場の秋の魚........4
築地魚市場 おさかなニュース
 「貝の旬 秋」..........12
 
 
次回の展示テーマ........ 12

   

はじめに

 築地魚市場には日本各地から魚が入荷しますが、季節によりその種類や産地は変わります。ある季節にその地方でもっともよくとれ、美味しい魚が築地に 送られてくるからです。
 春先に餌を求めて北上したカツオは、秋には南下します。戻りガツオといわ れます。このカツオの後を追うように、サンマが日本列島に近づきます。サケ も産卵のために遠い北の海から日本の川に帰ってきます。秋の魚市場もにぎや かです。
 第3回は、戻りガツオ・サンマ・サッパ・シログチ・マサバ・マイワシ・サ ケ・チダイ・クロダイ・ウマズラハギ・マハゼ・ホシガレイ…、秋の魚を 紹介します。

 
           一1一


魚の味を考える
 田中茂穂食用魚の味と栄養(1943)より一(その3)

 珍味 
 
珍味とは、「めったに食べられない、珍しくおいしい食物」(大辞林)のこ とをいいます。今回は、田中茂穂博士(元東京大教授、1878-1974)が、「食用魚の味と栄養」(1943年(昭和18年)出版)で魚の味について議論した101項目の なかから、“珍味の出来る場合(合計5項目)"を紹介します。

第18「少数のものは貴ばれ、多いものは賎められる」
 ここでは、珍しくて貴ばれる例として、シラウオ(シラウオ科)・シロウオ(ハゼ科)・サヨリがあげられています。多くとれすぎて賎められる例としてはイワ シ類があげられています。
 確かに、現在でも漁獲量が多い魚には珍味が少ないようですが、調理法によ り珍味に近い評価を得る場合もあります。マイワシの糠煮(北九州)…などです。

第58「幼魚(又は稚魚)が却って成魚よりも美味な事がある」
 「同種でも老幼によって味が違って、美味と不味に分かれるか、又は美味の 時節が違う。一般に成魚はその幼魚よりも美味で、成魚の美味な時節には幼魚 は著しく不味である。」 (第57)ここでの幼魚には若魚も含まれているようで す。魚の味はもともと成魚の味でもって決められているので、これはむしろ当然かもしれません。しかし、成魚にはふつう旬があって、これをはずすと味が落ちますが、案外、幼魚は味を落としません。時には、幼魚や稚魚のほうが成魚より美味しいことがあります。
 代表的な例はカタクチイワシやマイワシの幼魚や稚魚です。関東ではシラス干し、関西ではチリメン(ジャコ)と呼ばれています (高知では幼魚を"どろめ"と呼んで賞味します)。成魚の美味しさとは違った美味しさを持っていま す。このほか同じ例としては、イカナゴ(幼魚はカマスゴ、コウナゴなどと呼ば れます)、アイゴ類(沖縄の珍味スクガラス)、ギンポ・アユなどがあります。 “のれそれ”(主にマアナゴのレプトケパルス、おさかな情報No.5・おさかな シート001を参照)に味があるかどうかわかりませんが、珍味の一つでしょう。

第60「成魚でも頗る小形で、他魚の幼魚又は稚魚の大(き)さで、その為め幼魚又 は稚魚に通有の味を持って美味なものがある」
 これは成魚でもあまり大きくならず、骨や肉も柔らかいシラウオやシロウオ のことをいったものです。イワシ類のシラス(またはチリメンジャコ)などの幼魚 や稚魚と味が似ているということでしょう。

第75「概して多くとれる時期に美味で、然らざる時は不味である」
 もちろん、珍味はこの逆です。魚によっては多くとれる時よりもかえってあ まり多くとれない時の方が美味なことがあります。これは、多くとれる時美味 なものが非常に漁獲が少ない時、さほど美味でなくとも珍味として取扱われて、美味なものの中に入れられたり、また実際にあまり多くとれない時に限って美味なものもあるからです。このような魚は少ないとしながらも、8-10月のマイワシの大きいもの(オオイワシ、秋イワシのこと)を例にあげています。

第90「料理は魚の味を大に変化する」
 魚の味は料理法によって色々変化します。ここでは、魚の調理法は生(なま)・煮(に)・烙(やき)の三通りであるとし、それぞれの調理法を少し詳しく紹介しています。たとえば、生といっても、刺身・洗(あらい)・饅(ぬた)などがあると、そして、天ぷら種(材料)について議論しています。東京と地方の天ぷら種を比べて、東京では天ぷらに上等種を用いるが、地方ではふつうの料理にしては不味のものを天ぷらにして味を加える、としています。しかし、珍味については、ある夏に京都で鮒(ふな〉の天ぷらを食べたところ大変美味で、珍味と思った、と述べているにすぎません。おそらく、ふつうあまり美味しくないと思われている魚でも、調理法によっては(ここでは天ぷらですが)美味しく食べられることがあるということを言いたかったのでしょう。

博士は、「付録第二珍味」で、上の5項目を以下のように補っています。
「今まで経験しないものの内には珍味と思うものがある。」例:めふん(サケの腎臓の塩辛)、鮒鮨(ふなずし、琵琶湖地方)。
「初物と終初物(おわりはつもの)」例:初鰹(はつがっお、高知、東京)、トビウオ類(東京、初物として)秋イワシ(東京、「食べ納め」として)。
「殆ど味のないと思うものに珍味がある。」例:くさやの干物(ムロアジ類など)。"くさや"の材料としてはムロアジ類のほかにトビウオ類・サバ類などがありますが、博士がいうように「殆ど味のない」魚とは思えません。"くさや"には脂肪の少ない魚が適しています。「一地方に局限せられた料理に珍味がある。」例.:鰹のタタキ(高知〉。



資料:魚の旬とは
 「…”旬”の由来にはアユが関係しています。よく知られているように、魚介・果物など がよく熟して味の最もよい時期、転じて、物事を行うのに適した時期のことをいいます。 古代、朝廷で行われた行事の一つに旬儀(旬の犠式、旬政ともいいます)というものがあり、 毎月1・11・16・21日天皇が酒宴をひらいて、臣下に政治について聞きました。平安中期 以降、(旧暦の)4月1日と10月1日だけ行われるようになり、それぞれ孟夏(もうか)の旬、 孟冬(もうとう)の旬と呼びました。そして、孟夏の旬には扇を、孟冬の旬には氷魚(ひお、 (琵琶糊の)アユの幼魚)を賜うならわしでした。旬犠には季節にふさわしいものが賜物(たま わりもの)とされたことから、これが“旬”の由来といわれています」。
    (おさかな情報No.10(2000)より、一部改変)
 「ある魚の一番美味しい時期すなわち旬はいつかということを決めるのは大変難しい問題 でもあります。美味しさの基準は人によって違うことがあり、さらに、地域、時代、文化 などによっても異なる可能性があるからです。」
    (おさかな情報No.18(2000)より)

参考資料
太田静行ほか.1990.珍味その製法と流通技術.恒星杜厚生閣、東京.
おさかな普及センター資料館.2000.おさかな情報No.10「川魚と日本人」.
おさかな普及センター資料館.2002.おさかな情報No.18「魚の旬春」.
おさかな普及センター資料館.2002.おさかな情報No.19「魚の旬夏」.
坂本一男.2002,魚の旬を考える.おさかな普及センター資料館年報、(21),
田中茂穂.1943.食用魚の味と栄養.時代社、東京.

 
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築地魚市場の秋の魚

  アカカマス

            
東京都中央卸売市場の月別入荷量(s)
主な産地:長崎県、千葉県、神奈川県       (2001年、以下同じ) 
生産量:統計資料なし(2000年、以下同じ) 
産卵期:6〜8月                
生態:千葉県から南シナ海まで分布し、水深140m以浅の陸棚上にすみます。主に小魚やイカを食べます。浮遊性の卵を産みます。成長は早く、およそ半年で20cm,1年で25cm,2年で30cmになると考えられています。
主な料理:塩焼き、干物。
その他:夏の終わりから秋にかけて、アカカマスの他にヤマトカマスも入荷します。アカカマスより鱗が細かく、黄色味が薄い感じがします。
築地市場では、アカカマスは“本かます"、ヤマトカマスは“水かます"と呼ばれています。


 ウマヅラハギ

主な産地:長崎県、島根県
:生産量:統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:4〜7月
:生態:沿岸の海藻に卵を産みつけます。5cmぐらいになるまでは流れ藻に付いていますが、成長とともに沿岸の岩礁に移ります。1年で18cm,2年で22cm,3年で25cmに成長します。プランクトンや海底の小動物、藻類などを食べます。
主な料理:刺身、肝あえ、干物、煮付け、唐揚げ、味噌汁、ちり鍋。
その他:身質が似ているので、カワハギやフグの代用とされることもあります。1970年代に、全国で爆発的に漁獲量が増えましたが、その後減少しています。


 カイワリ

主な産地:長崎県、福岡県
生産量:統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:9〜11月
生態:小さいうちは、浅海の砂底などにいますが、成長するにつれて水深
50m以深の沖合に移ります。小魚やイカ、カニ、小動物などを食べます。
主な料理:刺身、塩焼き、煮付け、フライ。
その他:二枚貝を開いた形を“貝割"と呼びます。草木の双葉もこの形から貝割といわれます(貝割れダイコンなど)。カイワリは、尾ひれの形が双葉に似ているので“貝割"からとする説があります。


 カジカ

主な産地:新潟県、滋賀県、石川県
生産量:統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:2〜5月
生態:北海道南部から九州北西部まで分布します。主に河川にすんでいます。卵の大きさや生活の仕方(海に下るものと下らないもの)などに違いがあり、別種かどうか研究がすすめられています。
主な料理:唐揚げ、刺身、塩焼き、甘露煮。
その他:「鰍」という字はふつうカジカを指します。鰍はカジカ以外に、ドジョウ、ウナギ、アマゴ、イナダ、シイラ、ゴリとも読みますが、あまり一般的ではありません。カジカにこの字を使うようになった理由はよくわかりません。まさに秋の魚なのでしょうか。


 カツオ(戻りガツオ)

                               東京都中央卸売市場の月別入荷量(s)
主な産地:宮城県、福島県、千葉県
生産量:341450d(国内、年間の総漁獲量)
産卵期:5〜8月    
生態:春に餌を求めて日本近海を北上したカツオは、夏の間は東北から北海道沖でカタクチイワシやイカ、オキアミ類を食べながら過ごします。10月ごろになり水温が下がりはじめると南の海に向け南下し始めます。これが戻りガツオです。カツオの日本近海での成長は、1年で25cm,2年で45cm,3年で62cm,4年で75cmぐらいです。寿命は12年以上と考えられています。40cmを超すと成熟します。
主な料理:刺身、たたき、煮つけ、焼き物、茶漬け。
その他:江戸時代に初ガツオを詠んだ俳句や川柳は数多く残されていますが、戻りガツオを詠んだものはほとんど残されていません。初ガツオに比べると戻りガツオは脂がのり、味もまろやかな感じがします。旬の定義からいえばカツオの旬は秋といえます。江戸っ子は初物を食べることに心血を注いでいたのか、それとも、今と違ってさっぱりした味が好まれたのか、理由は定かではありません。



 カワハギ


主な産地
三重県、千葉県、大分県
生産量:統計資料なし
産卵期5〜8月   
生態:沿岸の海藻に卵を産み付けます。5cmぐらいになるまでは流れ藻に付いていますが、成長とともに沿岸の藻場や砂底に移ります。海底の小動物、藻類などを食べます。
主な料理刺身、肝あえ、干物、煮付け、唐揚げ、味噌汁、ちり鍋。


 クロダイ

主な産地
愛媛県、大阪府、静岡県        東京都中央卸売市場の月別入荷量(kg)
生産量統計資料なし
産卵期4〜6月
生態浮遊性の卵を産みます。ふ化後1ヵ月ごろから砂浜の波打ち際、河川の流れ込むアマモ場、海藻の多い岩礁などさまざまな場所に現われます。タイ類の中では最も浅海性で、成長しても沿岸に留まります。1年で12cm,2年で19cm,3年で23cm,10年で35cmに成長します。クロダイは'性転換をすることがよく知られています。幼魚はすべて雄ですが、15cmから25cmのものは両性型で、20cmから30cmに成長する間に雄か雌に分かれます。
主な料理刺身、塩焼き。
その他近縁のキチヌもこの時期入荷が多くなります。


 コノシロ

主な産地大阪府、愛知県、熊本県
生産量12335d  
産卵期:4〜5月 
生態浮遊性の卵を産みます。春から秋までは湾奥の河川が流入するところにいますが、冬場にはやや深場に移ります。1年で14cm、2年で19cm,3年で21cmに成長します。主にプランクトンを食べます。
主な料理寿司だね、塩焼き、酢漬け。
その他築地市場では、夏の終わりから秋に出回る5cmぐらいのものを“新子"と呼んで珍重します。小さいので身が柔らかく、握り鮨に使われます。


 サケ

主な産地
北海道、青森県、岩手県100
生産量166067トン(国内、年間の総漁獲量)o
産卵期:9〜12月 
生態:北部北太平洋に広く分布し、国内では茨城県以北の河川に産卵のため上ります。川底を掘って産卵した後は死亡します。卵は翌年の春にふ化し、2ヵ月ほどで海に下ります。小魚やイカなどを食べながらカナダ沖まで回遊し、4〜5年で生まれた川に戻って来ます。
主な料理塩焼き、石狩鍋、ルイベ、飯寿司、燻製、新巻、めふん(腎臓の塩辛)。卵はスジコ、イクラ。
その他:現在でこそサケは1年中出回っていますが、江戸時代以前は、産卵のため日本の沿岸に戻ってくる秋にしか漁獲することができなかった魚です。秋は平安時代には「とき」とも読みました。そのため秋のサケは「ときさけ」と呼ばれることがあります。北海道や東北地方で「秋味」とも呼ばれています。アイヌ語のアキアンチ(秋の魚の意味)から、秋においしくなるからなどの説があります。


 サンマ

主な産地北海道、福島県、宮城県1000
生産量216471d
産卵期:12〜6月 
生態:日本からカリフォルニアに分布します。日本近海では、春から夏にかけて餌のブランクトンを求めて本州太平洋岸を北上します。8月を過ぎるとふたたび南下しはじめ、冬場は本州南部沿岸に移動します。産卵場所は鹿児島県沖から三陸沖で、季節によって変わります。粘着性の卵を流れ藻などに産み付けます。1年で30cm以上に成長します。寿命は最大2年といわれています。
主な料理塩焼き、刺身、蒲焼き、煮付け、干物。
その他:漢字で秋刀魚と書くように秋を代表する魚の一つです。ところが、古くは下品な食べ物とされていました。落語で有名な「目黒のさんま」も、下級な魚であるサンマをお殿様が食べるという点におもしろさがあるのでしょう。そんなサンマでも、初物となると高値が付いたようで「駒とめて値ばかり聞いた初さんま」と江戸時代の川柳にも詠まれています。今日でも、サンマは大衆魚ですが、はしりのものはやや高めで取り引きされます。


 シシャモ


主な産地
北海道
生産量統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:11〜2月
生態:北海道東岸のみに分布する日本固有種です。産卵期に川を上り、川底の砂粒に卵を産み付けます。卵は翌年の春にふ化し、生まれた仔魚はすぐに海に下り、沿岸で成長します。寿命は1年半から2年半で、雌の中には3年半のものもいます。
主な料理干物、姿寿司、塩焼き、昆布巻、甘露煮、天ぷら。
その他:シシャモが全国的に知られるようになったのは、第二次世界大戦後のことです。1970年代に入ると乱獲や河川流域の都市化などにより漁獲量が急減しました。その代用としてカラフトシシャモが輸入されるようになりました。現在、シシャモは資源保護のため漁期は10〜11月、漁法は沿岸での桁網漁(けたあみ:小型の底曳網)に限られています。


 シログチ

主な産地:愛知県、愛媛県、兵庫県
生産量統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:6〜8月
生態:内湾などの砂泥底にすみます。浮遊性の卵を産みます。1年で16cm2年で23cm,5年で31cmをこえます。寿命は10年前後です。
主な料理塩焼き、練製品。


 チダイ

主な産地:山口県、長崎県、島根県20
生産量約1000トン
産卵期:10〜11月  
生態:北海道から九州、韓国に分布し、やや沖合の砂泥底や岩礁にすみます。浮遊性の卵を産み、1年で12cm,2年で18cm、3年で22cm6年で30cmに成長します。底生の小動物を食べます。
主な料理刺身、塩焼き、吸物。
その他:春に産卵を終えたマダイは夏から秋にかけて味が落ちているので、夏から秋の産卵期前のチダイが重宝されます。


 ハガツオ

主な産地:長崎県、山口県、静岡県
生産量:統計資料なし
産卵期:5〜8月 
生態:福島県以南に分布します。浮遊性の卵を産みます。日本近海では秋に多く漁獲されます。
主な料理:刺身、照焼き。



 ホシガレイ



主な産地:福島県、宮城県、岩手県
生産量:統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:5〜11月
生態:東北地方以南に分布します。浮遊性の卵を産みます。ふ化した仔魚は眼が体の両側にあり浮遊生活をしますが、1ヵ月ほどすると左眼が体の右側に移り底生生活に移ります。小動物や小魚を食べます。
主な料理:刺身、煮付け、唐揚げ。
その他:漁獲量が減っているため高値で取り引きされます。最近は養殖も行われています。


 ボラ


主な産地:神奈川県、長崎県、宮崎県
生産量:統計資料なし
産卵期:10〜1月 
生態:日本を含む世界の温暖海域に分布します。内湾の砂泥底、外海の岩礁などにすみ、河川に入ることもあります。底に付着した藻類などを食べます。1年で20cm,2年で32cm,3年で40cm,4年で45cmに成長します。
主な料理:洗い、塩焼き、煮付け、へそ(胃の幽門部。刺身、塩焼き)。卵はカラスミに加工。
その他:10月になると築地魚市場には、相模湾などからたくさんのボラが入荷します。この時期のボラは卵巣が発達していて、この卵巣を塩漬けにして、ていねいに乾燥させたものがカラスミです。
成長に伴って呼び名が変わる出世魚の一つです。3cm前後をハク、10cmまでをスバシリ、25cmまでをイナ、40cmまでをボラ、それ以上をトドと呼びます。(「トドのつまり」はここから来ています。)


 マイワシ


主な産地:茨城県、千葉県、三重県
生産量:149616d
産卵期:11〜4月 
生態:日本各地から中国に分布します。沿岸で浮遊性の卵を産みます。
1年目は成長が早く1ヵ月で3,5cm,2ヵ月で6cm,6ヵ月で12cm,1年3ヵ月で18cmになり成熟します。その後2年で20cm3年で21cm,4年で22cmになります。プランクトンを食べます。関東付近の若魚は、夏に餌を求めて東北、北海道まで北上します。秋になり水温が下がると南下し、鹿島灘以南で越冬します。成熟したものは春、北上の途中に産卵して沖合に移ります。房総近海のものは栄養状態が良く、北上しないものがほとんどです。
主な料理:刺身、たたき、塩焼き、フライ、煮付け、干物、つみれ、など。
その他:いわし雲は巻層雲(または絹積雲:けんせきうん)のことです。白くて薄く、鱗やさざ波が並んだように見えることから鱗雲、さば雲とも呼ばれます。5〜13qの上層に現れるので空が高く見えます。いわし雲が出ると、秋の空です。

 マサバ


主な産地:長崎県、静岡県、茨城県
生産量:346220d(サバ類として)
産卵期:4〜6月 
生態:日本各地から世界の温暖海域に広く分布します。沿岸で浮遊性の卵を産みます。関東近海では1年で24cm,2年で31cm,3年で35cm,6年で40cmになります。海域ごとに回遊の仕方は異なりますが、関東近海では5月になると餌を求めて常磐から三陸沖に北上し、7〜9月は道東の沖合ですごします。10月になると南下を始め、1〜5月は房総から伊豆諸島海域で越冬、産卵します。
主な料理:寿司、しめ鯖、たたき、塩焼き、煮付け、味噌煮、干物。
その他:「秋サバは嫁に食わすな」おいしいものを嫁に食べさせるのはもったいないといわれるほど、秋のサバは珍重されました。若狭湾でとれたマサバは、ひと塩ふってから1日で京都まで運ばれました。この道筋が鯖街道です。このマサバは主にサバ寿司にされますが、京都では秋よりも産卵まぎわの5月が旬とされます。
サバなどの赤身の魚にはアミノ酸の一種ヒスチジンが多く含まれています。ヒスチジンは魚の死後、細菌の酵素の作用でヒスタミンに変化します。ヒスタミンはアルカリ'性で辛味があるため、ヒスタミンの多い魚を食べると舌がピリピリします。また、一定量を越えるとアレルギー様食中毒をおこすことがあります。ヒスタミンは腐敗臭の主な成分であるトリメチルアミンより早く作られるため「サバの生き腐れ」といわれます。


 マハゼ

主な産地:千葉県、福島県、宮城県
生産量:統計資料なし  東京都中央卸売市場入荷量:統計資料なし
産卵期:11〜4月
生態:北海道南部から九州、朝鮮半島、中国北部に分布します。河川の流入する内湾の砂泥底や河口にすみます。砂泥底にY字型の入口が2つある巣孔を掘り、卵を産み付けます。ふ化した仔魚は浮遊生活をしていますが、6〜7月に2cmぐらいになると底生生活に移ります。
1年で成熟するものと2年で成熟するものがあります。小動物やノリなどを食べる雑食性です。
主な料理:洗い、唐揚げ、甘露煮、煮付け、天ぷらなど。
その他:東京湾では、開発に伴い多くの魚の姿が見られなくなりましたが、マハゼは、現在でもよく見られる魚の一つです。夏の終わりから秋になると、湾岸の岸壁はハゼを釣る人たちでにぎわいます。
引潮や沙魚(はぜ)釣り繞(めぐ)る埠頭(はと)の先(正岡子規)


そのほかの秋の魚

種類  産卵期 主な産地 主な料理
アオザメ  8〜9 宮城県、静岡県. 煮付け、ぬた、煮こごり
アカアジ 5〜6 長崎県、三重県 塩焼き、刺身
アマゴ 10〜12 高知県、和歌山県 塩焼き、刺身、田楽
アメマス 9〜11 北海道、青森県 塩焼き、刺身
アユ(落ちアユ) 9〜11 岐阜県、静岡県 塩焼き、干物
イシガレイ 12〜1 福島県、千葉県 刺身、煮付け
イボダイ 6〜8 福岡県、長崎県 塩焼き、干物
サツパ 4〜8 岡山県 酢の物(ままかり)
スマ 不明 福岡県、高知県 刺身、塩焼き
シマガツオ 不明 千葉県、静岡県 刺身、塩焼き
ニギス 2-4、8-10 新潟県、高知県 塩焼き、千物
マルアジ 6〜8 神奈川県、長崎県 刺身、塩焼き、煮付け

参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正倫.1987.材料料理大事典魚介I・U.学習研究社.
落合明・田中克.1998.新版魚類学(下)改訂版.恒星社厚生閣.
鴻巣章二(監).1994.魚の科学.朝倉書店.
更科源蔵ほか(編).1982.週刊朝日百科世界のたべもの日本編郷土の料理@〜P.朝日新闘社.
篠崎晃雄.1994.おもしろいサカナの雑学辞典.新人物往来杜.
東京都中央卸売市場経営管理部業務課.2001.東京都申央卸売市場年報(水産物編).
長澤和也・鳥澤雅(編).1991.漁業生物図鑑北のさかなたち.北日本海洋センター.
農林水産省統計情報部.2002.平成12年漁業・養殖業生産統計年報.
山田梅芳ほか.1986.東シナ海・黄海のさかな.水産庁西海区水産研究所

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 === 築地魚市場おさかな二ユース ===

貝の旬 秋

 
秋は、特徴のある貝がありません。夏から旬の続くアワビ類やトコブシ、春と秋に2回産卵するアサリやトリガイ、秋から冬に旬を迎えるマガキなどです。どれもほかの季節と重なっていて、秋にしか食べられないという貝はなさそうです。貝にとって秋は1つの季節というより季節の合間なのかもしれません。


       クロアワビ(くろ)        メガイアワビ(あか)



       マダカアワビ(またがい)     トリガイ

          
          アサリ            マガキ


参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正倫.1987.材料料理大事典魚介I・U.学習研究杜.
奥谷喬司(編)、1987.水産無脊椎動物U有用・有害種各論.恒星杜厚生閣.
多紀保彦・奥谷喬司・近江卓(監).1999.食材魚員大百科第2巻貝類十魚類.平凡社.

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次回の展示テーマ

  「魚の旬 冬」 2003年1月1日〜3月30日
 2003年1月5日〜3月31日
フグちり(トラフグ・マフグなど)・タラちり(マダラ)・アンコウ鍋(アンコウ・キアンコウ)・アラ鍋…冬は鍋物の季節です。多くの魚が春に産卵するので、冬が旬という魚が多くなります。アカアマダイ・キチジ・キンメダイ・クロマグロ・ヒラメ・ブリ・ヤナギムシガレイ・ムツ・ワカサギ…。

      −12一