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おさかな情報 No.19   2002年7月

2002年度第2回展示テーマ    魚の旬 夏

             目      次
はじめに.............. 1 
魚の味を考えるー田中茂穂「食用魚の味と栄養
 「魚の名物」........... 2
  
築地市場の夏の魚........4
築地魚市場 おさかなニュース
 「貝の旬 夏」..........12
 
 
次回の展示テーマ........ 12

   

はじめに

 築地魚市場には日本各地から魚が入荷しますが、季節によりその種類や産地 は変わります。ある季節にその地方でもっともよくとれ、美味しい魚が築地に送られてくるからです。 第2回は、アユ・スズキ・カンパチ・タチウオ・ゴマサバ・マアナゴ・オニオコゼ・・・、夏の魚を紹介します。産卵期の前を旬とする魚が多いですが、 ハモ・ドジョウ・マゴチ・タカベ・シロギスなどは、産卵期である夏がもっと も美味しいといわれています。

      イサキ                       アジ
                           シマアジ 
  ゴマサバ                    スズキ


           一1一


魚の味を考える
 田中茂穂食用魚の味と栄養(1943)より一(その2)

魚の名物
 輸送手段が発達し、日本各地の魚が大都市の市場に集められるようになった今日でさえ、まだ地名とともに呼ばれる魚がいます。秋田のハタハタ、日出の 城下鰈(マコガレイ)・若狭のグジ(アマダイ類)などです。 今回は田中茂穂博士(元東京大学教授、1878−1974)が、「食用魚の味と 栄養」(1943年(昭和18年)出版)で魚の味について議論した101項目のなかか ら、“魚の名物の出来る場合(合計9項目)”を紹介します。

第15「食べ慣れたものが美味である」
 「食べ慣れないものはかなり美味のものでも、その味がわからないことがあ る。いいかえると、故郷の魚は著しく美味に感じるのである」、といいます。 この例としては瀬戸内海のマダイとそのほかの産地のものとの間の議論がよく とりあげられます。博士によれば、「海の近くの人は新鮮なものを(ただし、東京の人からみれば少し堅すぎるぐらいのもの)、寒いところの人はふつう脂肪の 多いものを、暑いところの人は脂肪の少ないものを、荒海の近くにいる人は肉 の堅いものを、一方瀬戸内海や有明海沿岸の人は肉の柔らかいものを好む」といいます。「山間部の人は魚の種類を多く見ることもできないし、魚の新鮮度 も劣っているので(註:いるが)、料理法においては案外、発達しているところがあり」ます。飛騨ぶり(北陸地方の寒ブリ)、京都のさば寿司(若狭の(塩蔵の)マサバ)など、海から遠く離れた地方にもさまざまな魚の名物があります。 ここでは、次のような魚が名物としてあげられています。
東京(クロマグロ・ カジキ類・サンマ)、 大阪(マダイ・ハモ・キジハタ・マナガツオ・カワハギ)、  京都(ハモ・アマダイ類・ヤマメ)、 琵琶瑚岸(コイ・ヒガイ類・ホンモロコ・ハ ス)、 宮城県(メヌケ類・ウミタナゴ・コイ)、 秋田県(ハタハタ)、 山形県(シイ ラ)、 富山県・新潟県出雲崎(スケトウダラ)、 島根県(スズキ)、 高知(カツオ)、 広 島(サワラ)、 山口県(ヒメジ)、 大分県日出(城下鰈、マコカレイ)、 鹿児島(イシダ イ)、 北海道(ケムシカジカ・トゲカジカ・オヒョウ・ニシン)。

第17「古来の習慣が魚の味に影響するする事が多い」
 日本一般の習慣
海の王としてのマダイ、川の王としてのアユが例としてあげられ、マダイは宴会や祝儀に欠かせないもの、アユは夏には欠かせないものとされています。(マ ダイ・アユと日本人のかかわりあいについては、おさかな情報No.5「鯛と日本人」、No.10「川魚と日本人」を参照してください。)  地方的の習慣(衆に雷同する心理) 琵琶湖のふな寿司(ニゴロブナのなれ鮨)、金沢のごり料理(アユカケ(カマキ リ))、大分県日出の城下蝶(マコガレイ)、山口県のキンタロウ(ヒメジ)などの例が紹介されています.

第27「大きいもの又は小さいものを喜ぶ地方がある」
 コノシロが例としてあげられ、京都府久美浜の名物、コノシロの卯の花鮨は大きいものほど喜ばれるといいます。江戸前鮨では、”コハダ”と呼ばれる中位の大きさのコノシロが喜ばれます。

第31「初物の味」
 初物といっても、大変美味しいものとそうでないものがあります。「初物が 美味しくないときには初物を食べたという誇りを持ちたいので、東京では江 戸っ子以来の伝統で、争って初物を食べる」と田中博士はいいます。丹後では12月頃のブリ、東京では4月頃の新島のトビウオ類、5月頃のカツオがその好例としてあげられています。

第41「同種、同品種でも、とれる地方によって味を異にする」
 東京では次のものが美味とされるといいます(註:1943年当時あるいはそれ 以前)。近海物(ここでは内房や三崎のこと)のホシガレイ・マコガレイ・マダイなど、江戸前のウナギ・シラウオ・イシガレイなど、常磐や三陸のマサ バ・サンマ・マツカワなど、関西のゴマサバ・マナガツオ・イトヨリ・アカアマダイ・シロアマダイなど。博士によれば、「東京では徳川期よりの伝統的習 慣として近海物と江戸前のものを喜び」、イシガレイは大森、シラウオは佃とまでいう人もいたといいます。
 「とれる地方によって味を異にする」ということは、旬は地方により異なる 場合があるということになります。(当時(1943年)の東京・大阪・京都の旬の違 いについては、おさかな情報No.18「魚の旬 春」をご覧ください。)  

第53「近似種二種の美味の時節は、甲乙両地で時節を異にする」
第54「極めて近似種又は同種内の別品種は、甲地では甲種が美味で、乙地では乙種が美味の事がある」

 マサバとゴマサバでいえば、東京以北ではマサバを、南日本ではゴマサバを美味とします。ただし、東京では夏に味が落ちるマサバに対して、相対的に美味となるゴマサバを珍重するといいます。東京ではクロマグロを喜び、関西ではクロマグロより脂肪分の少ないキハダを賞味するとされています。

第55「甲地で相当多くとれ、乙地で極めて少ないか、又は全くない時には甲地では美味としているが、乙地ではさほど賞味しない事がある」
 美味しい魚であっても、あまりとれない地方では味がわからないことがある ということでしよう。現在の築地では、たとえば、ハモやソイ類(キツネメバル など)がこれに相当します。関東でも賞味されますが、関西(ハモ)や北海道(ソイ 類)ほどではありません。

第93「地方によって料理法の相違」
 「料理は魚の味を大に変化する(註:させる)」(第90)ので、面積が小さいとは いえ南北に長く、そのためさまざまな地勢を持つ日本では、流通手段の発達状況を考えるまでもなく、各地方に特有の料理法とこれに用いる特有の魚があることはむしろ当然といえるかもしれません。  


 出版当時(1943年、昭和18年)と比べて数は滅っていますが、今日でも多く の魚が地名とともに呼ばれています。これは、魚を中心とした食生活が変化 し、魚離れが叫ばれて久しいものがあるとはいえ、魚食の伝統(あるいは文化)が決して廃れたわけではない証拠の一つであるともいえます。

資料:魚の旬とは
 「…”旬”の由来にはアユが関係しています。よく知られているように、魚介・果物など がよく熟して味の最もよい時期、転じて、物事を行うのに適した時期のことをいいます。 古代、朝廷で行われた行事の一つに旬儀(旬の犠式、旬政ともいいます)というものがあり、 毎月1・11・16・21日天皇が酒宴をひらいて、臣下に政治について聞きました。平安中期 以降、(旧暦の)4月1日と10月1日だけ行われるようになり、それぞれ孟夏(もうか)の旬、 孟冬(もうとう)の旬と呼びました。そして、孟夏の旬には扇を、孟冬の旬には氷魚(ひお、 (琵琶糊の)アユの幼魚)を賜うならわしでした。旬犠には季節にふさわしいものが賜物(たま わりもの)とされたことから、これが“旬”の由来といわれています」。
    (おさかな情報No.l0(2000)より、一部改変)
 「ある魚の一番美味しい時期すなわち旬はいつかということを決めるのは大変難しい問題 でもあります。美味しさの基準は人によって違うことがあり、さらに、地域、時代、文化 などによっても異なる可能性があるからです。」
    (おさかな情報No.18(2000)より)
参考資料
おさかな普及センター資料館.2000.おさかな情報No.10「川魚と日本人」・ おさかな普及センター資料館.2002.おさかな情報No.18「魚の旬 春」・ 田中茂穂.1943.食用魚の味と栄養.時代社、東京
 
築地魚市場の夏の魚
アオダイ
アオダイ
主な産地:
伊豆諸島
生産量:統計資料なし
産卵期:不明
生態:相模湾から九州南部までの水深100m以深にすみます。
主な料理:刺身、塩焼きなど。
その他:東京では、伊豆諸島で漁獲された魚は「七島物」と呼ばれ賞味されます。その中で、アオダイ、ハマダイなどの深い海にすむ魚は古い文献などには見当たりません。いつごろからこれらの魚の旬が夏とされたのかはっきりしませんが、明治時代以降に漁法や輸送手段が発達したことや、夏の伊豆諸島海域は海の荒れる日が少なく安定して漁ができるなどのことが関係しているのかもしれません。


アユ
主な産地:
滋賀県、徳島県、岐阜県、和歌山県
生産量:漁業11172トン、養殖8603トン(2000年)
産卵期:9〜11月
生態:秋に生まれた稚魚は、すぐ海に下ります。川の水温が低い冬の間は海でプランクトンを食べてすごし、3月ごろ6cmぐらいに成長した稚アユは川に上ります。川に上るころには唇に櫛の歯状の歯が生えて、これで石に付いた珪藻を削ぎ取って食べるようになります。餌の珪藻を確保するために川の中に縄張りを作り、侵入者を迫い払います。9月ごろになると体に黒やオレンジの婚姻色が現われ、河川 の下流域で産卵し、短い一生を終えます。
主な料理:塩焼き、甘露煮、寿司、干物、天ぷら、うるか(塩辛)など。
その他:初夏になると、長い竿でアユを釣る釣り人の姿が見られます。この 時期、アユは珪藻を食べるようになっていて、餌釣りでは釣れません。そこで、アユが縄張りを作る習性を利用し、生きたアユをおとりにした友釣りで釣ります。解禁日は県や河川によって異なりますが、6月上旬という所が多く、このころを過ぎると、築地魚市場にも、天然のアユが入荷するようになります。「おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉(うぶねかな)」と芭蕉の句にも詠まれた鵜飼は、ウ(現在では主にウミウ)の首に縄をつなぎ、アユをとらせる漁法です。鵜飼はすでに奈良時代には行われていましたが、明治時代になって衰退しました。現在各地で行われているものは観光用ですが、宮内庁が行う御用鵜飼もあります。鵜飼で有名な長良川では、毎年5月中旬から10月中旬まで行われています。


イサキ イサキ
主な産地:県、高知県
生産量:5136トン(2000年、国内)
産卵期:6〜8月
生態:沿岸や内湾などで産卵します。稚魚は2cmぐらいになると体に縞模 様が現われます。この模様が瓜(夏の果物として親しまれましたが、最近はほとんど見かけなくなりました)に似ているので“うりぼう”と呼ばれますが、成長に伴い不明瞭になります。1年で15cm、2年で20cm、3年で25cm、4年で30cmぐらいに成長します。
主な料理:塩焼き、刺身、煮付。


イシダイ イシダイ図
主な産地:長崎県、千葉県、宮崎県
生産量:統計資料なし
産卵期:4〜7月
生態:岸近くの海面下で産卵、受精が行われます。小さなうちは水面近くを泳ぎ流れ藻などにも集まります。20cmぐらい(およそ2年)までは沿岸の岩礁で甲殻類やウニなどを食ベ、あまり移動しません。30 〜50cmになると、2〜3月に群れを作り、産卵場へ回遊します。
主な料理:刺身、洗い、塩焼き。
その他:白と黒の縞模様はイシダイの特徴の1つです。この模様は成長に伴い全体的に灰色がかり、縞がぼやけてしまいます。老成した個体では眼から口にかけて黒くなり「くちぐろ」と呼ばれます。磯釣りの魚としても人気があります。


ウシノシタ類 ウシノシタ図
主な産地:
福岡県、兵庫県、岡山県、大阪
生産量:統計資料なし
産卵期:5〜8月 
生態:クロウシノシタの産卵は沿岸の浅海で行われます。ふ化したばかりの稚魚の眼は、ふつうの魚と同じく左右にありますが、1cmを越えると右眼が左側に移動し、海底での生活に移ります。成長は早く、1年で12cm、2年で20cm、3年で27cmぐらいになります。
主な料理:フライ、ムニエル、煮付け。
その他:日本に分布するウシノシタ類はおよそ18種ありますが、このうち築地魚市場に入荷する主なものはクロウシノシタ、オオシタビラメ、アカウシノシタ、イヌノシタです。


ウナギウナギ図
主な産地:
愛知県、鹿児島県、宮崎県、静岡県
生産量:漁業765トン、養殖24118トン(2000年、国内 )
産卵期:5〜6月
生態:6月ごろマリアナ諸島近海で生まれたウナギは、11〜12月にシラスに変態して岸に近づきます。1〜3月ごろ河川を上り、魚や昆虫、カエルなどを食べて成長します。5〜10年を河川で過ごしたのち、9〜1月に海に下り、産卵場へ向かいます。
主な料理:蒲焼き、白焼き、う巻き、酢の物、茶碗蒸し、肝焼きなど。
その他:万葉集に「石麿(いわまろ)にわれ物申す夏痩(やせ)せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)取り食(め)せ…」という有名な歌があります。日本人は古くからウナギを夏の魚としていたようです。これは、ウナギに栄養があることや、水温が10℃以下になると泥に潜り餌を食べなくなるので冬場の漁は困難だったことなどが考えられます。今日では養殖物が大半を占め、輪入品も多く出回っています。一年を通して食べられるようになったウナギですが、土用の丑の日(7月20日 頃)に食べる習慣は現在でも残っています(おさかな情報No.7参照)。


オニオコゼオニオコゼ図
主な産地:
山口県、長崎県、福岡県
生産量:統計資料なし
産卵期:6〜7月
生態:産卵は夕方から行われます。雌雄が海底から泳ぎだし海面近くで産 卵します。1〜2カ月で約2cmに成長し、海底での生活に移ります。
主な料理:唐揚げ、刺身、煮つけ、椀だね。
その他:オニオコゼは本州中部以南に分布します。築地魚市場ではふつう “おこぜ”と呼ばれています。築地に入荷する“おこぜ”のうち3 割以上が福島県や岩手県など北日本のものです。実はこれらの “おこぜ”はオニオコゼではなく、北日本各地で“おこぜ”と呼ばれるケムシカジカです。 オニオコゼの鰭の棘(とげには毒腺があって、刺されるとたいへん 痛みます。本種に限らず、オコゼやカサゴの仲間には棘に毒を持つ ものが多く、釣りや調理の時に注意が必要です。


カンパチ カンパチ図
主な産地:
鹿児島県、長崎県、高知県
生産量:統計資料なし
産卵期:3〜8月
生態:世界の熱帯から亜熱帯海域に広く分布し、国内では東北地方以南にみられます。幼魚は沖合の海面近くにいますが、1cmぐらいになると体が海藻と同じような茶色になり、流れ藻に付いて生活します。
主な料理:刺身、照焼き。


キハダ キハダ図
主な産地:
静岡県、宮崎県、宮城県
生産量:98968トン(2000年、国内)
産卵期:4〜8月
生態:世界の温暖海域に分布します。日本近海では日本の南部からフィリ ピンにかけて産卵場があります。卵は1粒づつ海中に浮遊し、およ そ30時間ぐらいでふ化します。1カ月で6cm、6カ月で27cm、1年年で52cmに成長します。瀬付きと呼ばれるあまり移動しないものがいるといわれますが、詳しい回遊経路はわかっていません。
主な料理:刺身、寿司、煮付け、塩焼き。
その他:キハダの由来は、黄肌ではなく黄鰭(きはた。成魚の長く伸びた黄色の鰭から)です。小ぶりのものは“キメジ”と呼ばれます。


ゴマサバ サバ図
主な産地:
静岡県、三重県、鹿児島県
生産量:統計資料なし
産卵期:12〜6月
生態:日本からオーストラリア、東太平洋に分布し、日本近海では伊豆諸 島から台湾にかけての水深100m付近で産卵します。1年で28cm、2年で36cm、3年で40cm、4年で42cmになります。春から夏に かけて餌を求めて北上し、秋から冬に産卵のために南下します。
主な料理:味噌煮、塩焼き。
その他:九州や高知県などでは、刺身やたたきなどにして賞味されていますが、関東での人気は今一つのようです。関東付近では脂ののり具合 や身質で勝るといわれるマサバがたくさんとれ、マサバよりやや南に分布しているゴマサバがあまりとれないことが理由として考えら れます。


シマアジ シマアジ図
主な産地:
愛媛県、三重県、福岡県
生産量:統計資料なし
産卵期:11〜2月
生態:世界の温暖海域に分布し、国内でも千葉県以南の太平洋側で多くみら れます。1年で19cm、2年で31cm、3年で40cmになります。
主な料理:刺身、寿司、照焼き。
その他:養殖のほか、ニユージーランドなどからの輸入もあります。


シロギス シロギス図
な産地:千葉県、三重県、兵庫県
生産量:統計資料なし
産卵期:6〜8月
生態:産卵は夜間に行われ、産卵期間中は10日以上にもわたって産卵します。卵は1粒づつ海中に浮遊し、およそ20時間でふ化します。1年で10cm、2年で14cm、5年で20cmをこえます。
主な料理:天ぷら、塩焼きな、刺身、酢の物ど。
その他:「すゞしさや脚立吹き貫く海の風(青嵐、1934)」東京湾の夏の風 物詩としてキスの脚立釣りがありました。海の中に脚立をたて、そ こに腰掛けてキスを釣るものです。しかし、これはアオギス(ヤギスとも呼ばれます)を狙ったもので、シロギスは外道だったといいます。東京湾のアオギスは環境の悪化から昭和40年代には絶滅し、 脚立釣りの姿もなくなりました。


スズキ スズキ図
主な産地:千葉県、兵庫県、愛媛県
生産量:9337トン(2000年、国内)
産卵期:10〜3月
生態:外海に面した岩礁で産卵します。卵は1粒づつ海中に浮遊し、およ そ4日でふ化します。その後、内湾や河川に入り秋まで過ごしま す。水温が下がる冬期には、稚魚、成魚ともに内湾から湾外に移動 します。
主な料理:刺身、洗い、塩焼き。
その他:一般には夏の魚といわれますが、島根県のように産卵期前の冬場が もっともおいしいという所もあります。 コッパ→セイゴ→フッコ→スズキと成長に伴い名前が変る出世魚 の1つです。平家物語に平清盛がスズキを食べて出世した話が出て います。出世魚のスズキにあやかって食べたのか、清盛が出世した ので出世魚と呼ばれるようになったのかは定かではありません。


タカベ タカベ図
主な産地:
伊豆諸島、愛媛県、長崎県
生産量:統計資料なし
産卵期:
生態:外海に面した岩礁にすみます。
主な料理:塩焼き。


タチウオ タチウオ図
主な産地:千葉県、愛媛県、三重県
生産量:統計資料なし
産卵期:5〜11月
生態:海底からやや離れ、頭を上にして“立ち泳ぎ”をしています。
主な料理:塩焼き、千物、みそ漬、刺身、揚げ物、椀だねなど。
−9一

  
ハモ ハモ図

主な産地:熊本県、長崎県、宮崎県
生産量:統計資料なし
産卵期:4〜9月
生態:産卵は、水深40〜50mの砂泥底で行われます。稚魚は柳の葉に似た 形(レプトケパルスと呼ぱれます)で浮遊生活をしますが、秋には 変態し親と同じ形になって底生生活を始めます。1年で47cmにな り、その後、毎年10cmぐらいずつ成長します。
主な料理:はもちり、照焼き、寿司、どびん蒸し、蒲鉾、皮の酢の物など。
その他:関西では夏の味として一般家庭でも食べられています。骨(肉間骨)が 堅く多いので、独特の骨切りをして食べます。祇園祭(7月1日から7 月29日)のころ、京都の町中はハモの焼く匂いがするといわれます。 ところが、東京では関東沿岸で多くとれないないためか、あまり馴みのある魚ではありません。夏になると、築地魚市場にもたくさん のハモが入荷しますが、一般家庭で食べる魚ではないようです。


マアジ アジ図

主な産地:長崎県、島根県、茨城県
生産量:245988トン(2000年、国内)
産卵期:2〜7月
生態:小さいうちは流れ藻に付いたり内湾にいますが、成長と共に沖合に 移動します。春から夏に餌を求めて北上し、秋になると越冬のため 南下する回遊群と、あまり移動しない瀬付き群があります。それぞれの群れで体形や体色が異なり、回遊群はクロアジ、瀬付き群はキアジと呼ばれています。
主な料理:刺身、たたき、塩焼き、フライ、煮付け、干物など。
その他:「水うったあとに涼しきあぢの声」江戸時代の川柳です。タ方になると夫秤棒を担いだ魚屋がアジを売り歩き、かけ声も夏の風物詩だったようです。キアジの方がクロアジよりおいしいといわれます。


マアナゴアナゴ図

主な産地:愛知県、愛媛県、兵庫県
生産量:8364トン(2000年、国内)
産卵期:4〜6月
生態:産卵場は東シナ海中部の陸棚縁辺部と考えられています。幼魚(ハモと同じくレプトケパルス。“のれそれ”とも呼ばれます)は10ケ 月間の浮遊生活の後、変態して底生生活に移ります。
主な料理:寿司、蒲焼き、自焼き、甘煮、あなごめしなど。


マコガレイマコ図

主な産地:
千葉、青森、福島県、神奈川県
生産量:統計資料なし
産卵期:11〜4月
生態:海底から雌雄が泳ぎ上がって産卵します。卵は粘着性があり海底な どに付着します。およそ5日でふ化し、沖合を遊泳します。1cmぐ らいになると左眼が体の右側に移り、海底での生活を始めます。1 年で10cm、2年で15cm、3年で20cmになります。
主な料理:刺身、唐揚げ、煮付け、塩焼きなど。
その他:カレイの仲間は夏が旬といわれることがありますが、イシガレイは夏、マガレイは冬、メイタガレイは春など種類によってまちまちです。マコガレイでも産地により冬というところもあります。実際、 産卵直後を除き、大きく味が変化することはないようです。夏は身が痩せているヒラメの代役ということもあるのかもしれません。ところが北米大西洋岸には、ナツビラメというヒラメの一種がいて、 日本にも輸入されています。



そのほかの夏の魚

種類  
産卵期 主な産地 主な料理
アカエイ  4〜11 千葉県、神奈川県 煮付け、ぬた、煮こごり
イワナ   9〜11 長野県、山形県 塩焼き、刺身、田楽
ウツボ   7〜9 高知県、和歌山県 千物、佃煮、たたき
ウルメイワシ  1〜5 宮崎県、島根県  千物、塩焼き、刺身
シイラ   5〜10 福岡県、島根県 照焼き、刺身
ドジョウ  5〜7 茨城県、北海道 柳川鍋、蒲焼き、汁もの
ハマダイ  
(おながだい)
不明 東京都、神奈川県 刺身、塩焼き
ヒメダイ (オゴ)
不明 東京都、長崎県 刺身、塩焼き
ヒラマサ  4〜5 長崎県、高知県 刺身、塩焼き、照焼き
ベラ類   7〜9 千葉県、静岡県 塩焼き、煮付け
マゴチ   4〜7 千葉県、鹿児島県 刺身、揚げ物、蒸し物
マハタ   和歌山県、三重県 刺身、塩焼き、煮付け
ムロアジ  6〜8 三重県、東京都 干物、塩焼き
メカジキ  2〜8 静岡県、宮城県 刺身、照焼き
ヤマメ   8〜10 山梨県、長野県 刺身、塩焼きなど

参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正倫.1987.材料料理大事典魚介I‐U.学習研究社. 清安市郷土博物館(縮).2001.平成13年度 第1回特別展アオギスがいた海.清安市郷土博物館. 落合明・田中克.1998.新版 魚類学(下)改訂版.恒星社厚生閣. 川那部浩哉.2000.魚々食記.平凡社. 更科源蔵ほか(編).1982.週刊朝日百科 世界のたペもの日本編 郷土の料理@〜P.朝日新聞社. 篠崎晃雄.1994.おもしろいサカナの雑学辞典.新人物往来社. 東京都中央卸売市場経営管理部業務課.2001.東京都中央卸売市場年報(水産物編). 農林水産省統計情報部.2002.平成12年漁業・養殖業生産統計年報.


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 === 築地魚市場おさかな二ユース ===

貝の旬 夏
 夏は、岩場の貝が多く出回ります。岩場では縄が絡まるので網は使いにくく、岩影に固く張り付いた貝を船の上から剥がしとるのは容易なことではありません。そのため岩場での貝の漁獲の多くは、古来より潜水漁に頼っていました。潜水漁を専門にする人たちをアマ(女は海女、男は海士)と呼んでいます。今日でも三重県や千葉県などではアマによって採貝が行われています。魚類のように脂肪を貯えることのない貝類は、季節的な味の変化が少ないといわれています。しかし、呈味成分であるグルタミン酸などが季節的に変化していることがわかってきました。千葉県で漁獲されたクロアワビでは、夏に呈味成分がもっとも多くなり、夏が旬であることが化学的に確かめられました(Watanabe他,1992)。なお主な岩場の貝類の産卵期は、アワピ類11〜12月、トコブシ6〜11月、サザエ5〜11月で、貝類も産卵期前が旬のようです。



クロアワビ(くろ)          メガイアワビ(あか) 


マダカアワビ(またがい)      トコブシ


バティラ
サザエ   バテイラ(しったか)    ヒオウギ


イワガキ

参考資料
奥谷喬司(編).1987.水産無脊椎動物U 有用・有害種各論.恒星社厚生閣.
Watanabe,H.,H.Yamanaka and H.Yamakawa.1992∴Seasonal variations  of extractive componentsin the 以下略。

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次回の展示テーマ

  「魚の旬 秋」 2002年10月1日〜12月30日
 春先に餌を求めて北上したカツオは、秋には南下します。戻りガツオです。後を追うように、サンマが日本列島に近づきます。サケも産卵のために遠い北の海から日本の川に帰つてきます。戻りガツオ・サンマ・マサバ・
マイワシ・サケ…、秋の魚市場もにぎやかです。


      −12一