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おさかな情報 No.18   2002年4月


2002年度第1回展示テーマ    魚の旬 春

             目      次
はじめに..............1 
魚の旬とは............2 
魚の味を考える  〜田中茂穂「食用魚の
    味と栄養」(1943)より〜(その1)....2
「鯛の名産地」..........4   
「築地魚市場の春の魚.....5
「貝の旬 春」...........12
次回の展示テーマ........12

メバル

アイナメ
 




はじめに

 築地魚市場には日本各地から魚が入荷しますが、季節によりその種類や産地は変わります。ある季節にその地方でもっともよくとれ、美味しい魚が築地に送られてくるからです。築地は日本中の旬の魚を集めていることになります。
 2002年度は4回の展示で、春夏秋冬の旬の魚をさまざまなエピソードとともに紹介します。輸入魚が食卓にのぽることがめずらしくなくなり、また多くの魚が養殖されるようになって季節感が薄れつつあるといわれますが、魚の旬を理解することは、大都市にある魚市場の意義を考える上でも大切であると思います。
 第l回は、マダイ、サワラ、シラウオ、シロウオ、カツオ、メバル・・・、春の魚です。



    一1一

魚の旬とは

 「・・・料理や食材の話には“旬”ということばがよくでてきますが、この“旬”の由来にはアユが関係しています。よく知られているように、魚介・果物などがよく熟して味の最もよい時期、転じて、物事を行うのに適した時期のことをいいます。古代、朝廷で行われた行事の一つに旬儀(旬の儀式、旬政ともいう)というものがあり、毎月1・11・16・21日天皇が酒宴をひらいて、臣下に政治について聞きました。平安中期以降、4月1日と10月1日だけ行われるようになり、それぞれ孟夏(もうか)の旬、孟冬(もうとう)の旬と呼びました。そして、孟夏の旬には扇を、孟冬の旬には氷魚(ひお、アユの幼魚)を賜うならわしでした。旬儀には季節にふさわしいものが賜物(たまわりもの)とされたことから、これが“旬”の由来といわれています」   (おさかな惰報No.10(2000)より)。


 魚はふつう産卵前がもっとも美味といわれています。ブリ・ヒラメ・トラフグなどのように春に産卵する魚が多いので、冬が美味しい魚が多いことになります。一方、ドジョウ・ハモ・マゴチなどのように産卵期(これらの魚では夏)が美味という魚もいます。
 一般に、脂ののった魚が美味しいといわれます。これは、魚の美味しさが脂質含量(脂(あぷら)ののりぐあい)と大いに関係しているからです。多くの魚は産卵前に活発に餌をとり、脂質が貯えられ、同時にアミノ酸などの美味しい成分も増加すると考えられています。しかし、どんな魚も産卵後は急に味が落ちます。
 ところで、ある魚の一番美味しい時期すなわち旬はいつかということを決めるのは大変難しい問題でもあります。美味しさの基準は人によって違うことがあるからです。さらに、地域、時代、文化、歴史などによっても異なる可能性があります。



魚の味を考える
 一田中茂穂「食用魚の味と栄養」(1943)より一 (その1)

 田中茂穂博士(元東大教授、1878−1974)は“日本魚類学の父”と呼ばれる研究者で、阿部宗明博士(おさかな普及センター資料館名誉館長、1911-1996)の先生にあたります。田中博士は数多くの論文の執筆のかたわら、非常にたくさんの魚や魚類学についての普及・啓蒙的な文章を書いています。そのなかには、魚の味に関するものもたくさんあります。1943年(昭和18年)に出版した「食用魚の味と栄養」はその集大成といえるものです。この本のなかで博士は101項目にわたって魚の味について議論しています。

 これからしばらくの間(おさかな情報No.18-21)、この本をもとにして魚の味について考えてみたいと思います。
 今回は、第40「(魚は)同種、同品種でも、そのとれる時期によって味が違う」、第41「同種、同品種でも、とれる地方によって味を異にする」、第42「同種、同品種でも、とれる地方で美味の時節が違う」という旬に関係する項目から、東京と大阪と京都の旬の違いを紹介します。


 田中博士(1943)の東京・大阪・京都における魚の旬の違い
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 魚種          東京      大阪      京都
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マダイ          冬       春
チダイ          冬       冬        夏
アイナメ         夏       春
ヨコワ(小型のホンマグロ)春     秋
クロマグロ(冬)     春(日本海)
アユ           夏       夏        秋
トビウオ         春       夏
マイワシ         秋       秋         夏
ボラ        冬・夏(大型)    秋         冬
イボダイ          夏        秋
マカジキ          夏       秋
アカカマス        秋        秋         夏
シログチ         夏       冬
マゴチ           夏        冬         秋
オニオコゼ        夏       冬
カワハキ         夏       冬         夏
メイタガレイ        夏       冬         春
サクラマス        春                  夏
ブリ(冬)    イナダ(夏)            ハマチ(春)
         ワラサ(春)       ツバス(秋)東京のワカシに相当
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 ただし、3都市とも、コハダ(コノシロの小さいもの)、ウナギ、サヨリ、タ チウオ、マナガツオなどは一年中美味しいとしています。
 表をみると、1943年当時(戦時中であったことから、そのころまでは、と考えるべきでしよう)は、今日では考えられないほど、3大都市の旬の魚に違いがあったことがうかがえます。博士の見解が正しければ、もちろん食の文化・ 歴史の違いを考慮する必要がありますが、当時まではまだ大都市間にも今日よりはるかに地域差あったといえます。
 現在では、東京・大阪・京都をはじめ大都市間で旬の魚に大きな違いはありません。このような旬の魚の均一化には、運送手段の発達だけでなく、食べ物 や食文化の情報を全国に伝えるマスコミの発達が大いに貢献したと考えられます。たとえば今日では、東京でも、夏になれば京都名物のハモ料理、冬には大阪のフグ料理がふつうに食べられるというような具合です。
 ところで、ほとんど1人で研究していた田中博士が、どうしてこのような “研究”ができたのかということは大変興味のあるところです。博士の魚類標本は現在東京大学総合研究博物館に保管されていますが、その標本目録(台 帳)にその秘密の一端をみることができます。台帳をみると、博士が本郷(東 京)と三崎(神奈川県)で研究したほか全国各地に採集旅行に行ったことがわ かります。そして、博士自身の採集以外に、日本全国の研究者・教師・漁業者 などから実にたくさんの標本が送られてきたことが記されています。標本には採集地・採集方法・採集者などの記録のほかに、地方名などたくさんの情報が添えられていました(ちなみに、博士には魚の方言に関する著作もあります)。各地方の旬の違いなど魚の味の”研究”にもこれらの情報が大いに役 立ったと思われます。


参考資料
おさかな普及センター資料館.2000.おさかな情報No.10「川魚と日本人」・ 田中茂穂.1943.食用魚の味と栄養.時代社、東京. 大石圭一“1977.かれいその裏とおもて.恒星社厚生閣、東京.



     鯛の名産地
 現在、明石をはじめ、鳴門、若狭、長崎などたくさんの漁場が鯛の名 産地といわれています。ここでは、縄文時代から平安時代までの代表的 な資料に基づいて鯛の産地を紹介します。

縄文時代の遣跡(約1万年前一)
弥生時代の遺跡(紀元前300年一)
藤原宮跡木簡(694−710年、宮庁の伝達や帳簿、貢ぎ物の荷札)
平城京跡木簡(710−784年)
正倉院文書(奈良東大寺正倉院に伝来した文書)
風土記(713年、諸国で編纂された地誌)
万葉集(奈良時代末期に成立、約4500首を収めた歌集)
延喜式(927年、平安時代中期の政府の慣例集、貢ぎ物の記録も)

 チズ


参考資料
更科源蔵ほか(編).1982.週刊朝日百科 世界のたべもの 日本編 22魚介.朝日新聞社. 東 光治.1943.続万葉動物考.人文書院. 福島好和,1971.古代諸国貢納水産物の分布について.人文地理,23:29−59. 福島好和.1973.延喜式における魚名について.人論研究,23:71-86. 福島好和.1974.風土記にみられる水産物について.関西学院史学,26:16−45.
 

   一4一

     築地魚市場の春の魚
アイナメ
アイナメ


                      東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:北海道、青森、岩手、関東沿岸
生産量:統計資料なし       
産卵期:秋〜初冬
生態:雄は縄張りをつくり、雌に求愛します。その後、海藻の根元などにゴルフボール大の卵の塊を約20個産みつけ、卵がふ化するまで雄が保護します(宗原、2000)。、
主な料理:刺身、椀(わん)だね、照焼き、煮付け、唐揚げなど。
その他:山口県徳山などでは、アイナメのことを「もみだねうしない」と呼びました。山村のお百姓さんが、春においしいアイナメを食べ過ぎて、籾種(もみだね、イネの種)の代金まで使ってしまったという話が由来となっています(榮川、1982)。


ウミタナゴ
タナゴ
主な産地:神奈川、千葉、静岡
生産量:統計資料なし
産卵期:4〜5月
生態:胎生魚で、親と同じ体形をした3〜7cmの幼魚を産みます。
主な料理:煮付け、塩焼き、バター焼き、唐揚げなど。
その他:北海道から九州までの沿岸でふつうに見られますが、まとまって市場に入荷することはあまりありません。

カツオ
カツオ
                            東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)

主な産地:千葉、福島、三重
生産量:287344トン(1999年、国内)
産卵期:6〜8月
生態:日本近海では、3月ごろに沖縄、4〜5月に紀伊半島から伊豆諸島、6月以降東北の沖合と餌を求めて北上し、夏の間は東北から北海道沖で過ごします。10月ごろになると南下し、日本から遠ざかっていきます。これらのカツオは1〜3才の若い個体と考えられています。産卵は日本の南部から、オーストラリアにわたる広い海域で行われているようです。
主な料理:刺身、照焼き、煮付け、角煮、身をすりおろして腕だねなど。
その他:「目には青葉山ほととぎす初鰹(はつがつお)」と歌われ、江戸っ子が先を争って食べたというカツオは、5月に鎌倉でとれたものでした。このころのカツオは、まだ脂が少なく、秋のカツオ(戻りガツオ)に比べてさっぱりしています。

   一5一

サクラマス
マス
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:北海道、青森、山形
生産量:統計資料なし
産卵期:8〜10月
生態:生まれた後、およそ1年間を河川で過ごし、海に下ります。海での 回遊生態はよくわかっていませんが、1年ぐらいで河川に戻りま す。河川に上るのは早春から初夏にかけてで、このころ沿岸でもた くさん漁獲されることから春の魚とされています。北海道や東北近海では、体中央付近の高くなる個体が漁獲されます。これをイタマスと呼んでいます。
主な料理:マス寿司、ルイベ、鍋物、燻製(くんせい)。


サヨリ
サヨリ
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:福岡、千葉、宮城
生産量:統計資料なし
産卵期:4〜6月
生態:産卵期になると藻場(もば)や流れ藻に集まり、群れで産卵しま す。卵には粘着性があり、海藻に産みつけられます。1年で25cmぐ らいに成長し、寿命は2年と考えられています。
主な料理:刺身、昆布じめ、腕だね、焼物、天ぷら、千物。
その他:大きなものは、その形から閂(かんぬき、門が開かないように通しておく角材)と呼ばれます。


サワラ
サワラ
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:長崎、島根、福岡
生産量:5321トン(1999年、国内)
産卵期:5〜6月
生態:瀬戸内海では、4月に外海から群れが入り、産卵します。産卵後も 内海で夏を過ごし、水温低下とともに11月ごろ外海に出ます。以前 は東京湾でもサワラの季節的な回遊がみられましたが、昭和2年以 降その記録はありません。
主な料理:刺身、みりん千し、開き、焼物。
その他:サワラは、漢字では鰆と書きます。サワラは春になると、外海から産卵のために群れをなして内湾に入ってくるため、この字が生まれたと思われます。

    一6一
シラウオ










シラウオ
                      東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:青森、茨城、北海道
生産量:統計資料なし
産卵期:2〜5月
生態:河口域と汽水湖にすみます。ふ化後、産卵期までは沿岸域で生活し ます。産卵期になると)に上り、砂地に産卵します。寿命は1年。
主な料理:腕だね、卵とじ、酢の物、寿司、天ぷら。
その他:「月もおぽろにシラウオの かがりもかすむ 春の宵」と芝居の台 詞(せりふ)にもなったシラウオは、江戸の名物の1つでした。徳 川家康が江戸に移ってから、将軍家は佃島と京橋小網町の漁師に漁 業権を与え、シラウオを献納させました。当時のシラウオ漁は、1月中旬から4月末まででしたが、盛期は桜の開花する3月から4月 でした。漁場は、隅田川、中川、江戸川、多摩川などの河口でし た。夜間にかがり火で集めたシラウオを四手網(よつであみ)で漁獲していました。明治時代以降、水質の汚染などとともに滅少して 昭和30年代には全くとれなくなってしまいました。 本州に分布するシラウオ類には、シラウオとイシカワシラウオの2種がいます。イシカワシラウオは、主に外海に面した沿岸域にすむため、河口域にあたる江戸前のシラウオは、イシカワシラウオで はなくシラウオであったと考えられます。 弱りやすいため、活魚は入荷しません。


シロウオ
シロウオ

主な産地:佐賀、福岡、岡山
生産量:統計資料なし
産卵期:3〜6月
生態:産卵期になると海から川に上がり、河口域の砂底に産卵します。
主な料理:おどり食い(生きたまま食べる)、玉子とじ。
その他:シラウオとは違い、ハゼ科の魚。丈夫で生かして運べるため、築地 市場ではビニールパックに少量の水と酸素を入れ、生きたまま売ら れています。2月から5月ごろにかけて入荷し、季節が進むととも に産地も九州から中国、東北と北上します。
築地市場ではイサザと呼ぱれますが、標準和名イサザは同じハゼ 科の魚で琵琶湖の特産。

    一7一

ニシン
ニシン
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:北海道
生産量:2579トン(1999年、国内)
産卵期:3〜6月
生態:北海道では、水深18m以浅の海藻がよく茂った岸辺に大群で押し寄 せ、夜半から明け方に産卵します。雌は海藻などに卵を産みつけ、 雄はその付近の海中に放精します。産卵するニシンが多いときには 精液で一帯の海が白く濁り、これを「群来る(くきる)」、「群来 汁」と呼んでいます。
主な料理:身欠きニシン、塩焼き、蒲焼き、昆布巻き、刺身、燻製、酢の 物、ニシン寿司、三平汁など。卵はカズノコ。
その他:北海道では、漁獲の時期や大きさなどによって春ニシン、夏ニシ ン、冬ニシンに大別しています。このうち春ニシンは、産卵のために来遊するもので、体は大きく(21〜23cm)よく太っています。 走りニシン、クキ(群来)ニシン、産卵ニシン、鼻白ニシン、鼻黒 ニシンなどとも呼ばれます。産卵期に大群で浜に押し寄せる姿から春告魚と書かれることもあります。 北海道でのニシン漁は、沿岸に来る産卵群を漁獲するものでし た。1897年にピークに達し97万トンの漁獲がありました。ソーラン節やニシン御殿はこのころのものです。しかし、その後漁獲量は年々減少を続けて1950年代にはほとんどとれなくなってしまいました。 近年、漁獲制限や種苗生産などが行われ、ここ10年間は年間2000トン前後で推移しています。


ネズッポ類
ネズミコチ
                    ネズミゴチ  
主な産地:宮城、千葉、茨城 
生産量:統計資料なし     東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
産卵期:4〜6月
主な料理:天ぷら、南蛮(なんばん)漬け、煮こごり。
その他:築地市場では、ネズミゴチ、ヌメリゴチ、トビヌメリ、ハタタテヌメリ、ヤリヌメリなどを区別せずに「めごち」と呼んでいます。図鑑に出てくるメゴチ(コチ科)とは別のグループ(ネズッポ科)の魚です。ヤリヌメリは臭みが強く、「たばこゴチ」と呼ばれます。

    −8一


ハマトビウオ
トビウオ
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:屋久島
生産量:統計資料なし
産卵期:12〜1月
主な料理:刺身、塩焼き、つみれ、フライ、干物。
その他:鹿児島や高知では11〜2月、伊豆諸島では3〜4月ごろ群れが来遊 し、漁獲されます。築地市場では、ハルトビ、カクトビなどと呼ば れます。


マダイ
マダイ
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:長崎、愛媛、福岡
生産量:15731トン(1999年、国内)
産卵期:3〜6月(国産、天然)
生態:水温が14℃前後になると、水深30〜100mにある丘のように盛上がった岩場に集まって産卵します。水温で産卵の時期が決まるので、 産卵時期は南で早く(鹿児島では1月下旬から)、北で遅くなっています(山形や青森では5月下旬から)。産卵は日没前後に海面近 くで行われ、2カ月も続くといわれています。
主な産卵場は、日本海側では山形県沖、新潟県粟島、能登近海、 隠岐周辺、太平洋側では東京湾口、伊勢湾ロ、瀬戸内海東部、豊予 海峡、豊後水道、九州西岸では沖の島、対馬、壱岐、五島列島、天草、甑島(こしきじま)周辺などです。
主な料理:刺身、塩焼き、椀だね、鯛めし、鯛茶漬け、鯛そうめん。
その他:「さくらだい」という名を時々耳にしますが、これには3種類の魚が含まれています。
. マダイ。瀬戸内海地方で、桜の咲くころ産卵期をむかえたマダイの雌が、普段より色も鮮やかであったため「花の王=桜」と呼ばれ、美化されたもの。
. サクラダイ。スズキ目八夕科ハナダイ亜科の魚の標準和名。
. 西アフリカに分布するタイ科の1種の名称(ふつうアサヒダイ と呼ばれているもの)。

    一9一


マナガツオ
マナカツオ
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:福岡、長崎
生産量:統計資料なし
産卵期:5〜8月 生態:産卵は岩場や砂底の水深10〜20mで行われ、卵は海中に漂います。
主な料理:刺身、照焼き、みそ潰、煮付け。


メバル
   メバル
                  東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
主な産地:大分、香川、神奈川(メバル)
     青森、秋田、新潟(ウスメバル)
生産量:統計資料なし
産卵期:12〜2月(メバル)
    3〜6月(ウスメバル)
生態:メバルは北海道南部から九州までの沿岸の藻場や岩場にすみます。 11月ごろに交尾し、卵が熟す12〜1月ごろ雌の体内に貯えられた精子で受精します。卵は雌の体内で発育し、12〜2月に4〜5mmの仔魚が生み出されます。 ウスメバルは北海道南部から関束付近までと日本海の水深100mぐ らいの岩場にすみます。12〜1月に交尾し、メバルと同じように体内受精します。3〜6月には5mmぐらいの仔魚が生み出されます。
主な料理:刺身、焼物、煮付け。
その他:メバルは、筍(たけのこ)の出る季節においしくなるといわれ、このころは筍メバルと呼ばれます。しかし、メバルの産卵期をみると 12〜2月で、筍の時期にはやせ細っていることになります。一方、 ウスメバルは、そのころから産卵期を迎えるので、ちようどおいしい時期となります。築地市場では、メバルを「黒メバル」、ウスメ バルを「メバルまたは赤メバル」と呼んでいるので、本当の筍メバルはウスメバルということになります。なお、標準和名のタケノコ メバルは別種です。

   −10一


イカナゴ          東京都中央卸売市場の月別入荷量(トン)
イカナゴ
生産量:統計資料なし
産卵期:12〜5月
生態:水深10〜30mの砂底で群れて産卵します。卵は砂に粘着し10〜20日でふ化します。6月ごろから10月までは砂に潜り、夏眠をします。 夏眠の間は餌をとらないため、5月ごろまでに脂肪を貯えます。
主な料理:釜あげ、釘煮、天ぷら、煮付け、酢みそあえ、干物。
その他:築地市場では、一度湯であげたもの(釜あげ)と千物が多く、鮮魚はあまり入荷しません。


チカ チカ

主な産地:北海道
生産量:統計資料なし
産卵期:3〜5月 生態:河川が流れ込む砂浜に、夜間、群れで押し寄せ産卵します。
主な料理:塩焼き、南蛮潰け、天ぷら。
その他:ワカサギの代用として使われることがあります。


その他の春の魚
 種類     産卵期      主な産地      主な料理
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カサゴ     11〜4       愛媛県、千葉県  煮付け、唐揚げ、刺身
カワヤツメ   5−6,9-10   秋田県、山形県  蒲焼き
コイチ      5〜9        長崎県、福岡県   蒸し物、唐揚げ
コショウダイ  5〜6       宮崎県、長崎県  塩焼き
ババガレイ   2〜4       北海道、宮城県  煮付け、刺身
ヒガイ      5〜7       滋賀県        塩焼き
ホシザメ    4〜5        千葉県、神奈川県 ぬた、ゆびき
マスノスケ   9〜10       岩手県、青森県  ルイベ、塩焼き、フライ
マトウダイ   1〜6        長崎県、高知県  刺身、煮つけ
ムツゴロウ              佐賀県        蒲焼き、佃煮
メイタガレイ  10〜3       福島県        煮付け
ヤナギノマイ  4〜7        北海道、青森県  塩焼き、煮付け
ヤナギムシガレイ10〜3     新潟県       千物、塩焼き


参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正偸.1987.材料料理大事典 魚介I‐II.学習研究杜. 榮川省造.1982.新釈 魚名考.青銅企画出版. 落合 明,田中 克.1998.新版 魚類学(下)改訂版.恒星社厚生閣. 更科源蔵ほか(編).1982.週刊朝日百科 世界のたぺもの日本編 郷土の料理@〜P.朝日新聞社. 東京都中央卸売市場経営管理部業務課.2001.東京都中央卸売市場年報(水産物編). 長澤和也・鳥澤 雅(編).1991.漁業生物図鑑 北のさかなたち.北日本海洋センター. 農林水産省統計情報部.2001.平成11年漁業・養殖業生産統計年報. 藤森三郎ぽか(編).1971.東京都内湾漁業興亡史.東京都内湾漁業興亡史刊行会. 宗原弘幸.2001.アイナメ類の嫁とりと子育て.pp‐151-167.魚のエピソード 魚類の多様性生物学.東海大学出 版会.

    −11−


    〜〜〜 築地魚市場おさかな二ュース 〜〜〜

貝の旬 春
 春は、砂浜の貝の季節でもあります。4月下旬から5月上旬にかけて、砂浜 や千潟では潮千狩りのシーズンを迎えます。千満の差が大きいときを大潮と呼びますが、春の大潮は特に下げ幅が大きく、ほかの時期には海の底になっているような所まで引いてしまうことがあります。そのため、海に潜らなくても簡単に貝類の採集ができます。また、砂浜にすむ貝類は春の終わりから初夏が産卵期であるものが多く、旬の貝といえるでしよう。
キサゴマルタニシホラガイ
キサゴ(ながらみ)   マルタニシ    ボウシュウボラ(ほらがい)

アカガイトリガイバカガイセタシジミ
   アカガイ      トリガイ    バカガイ(あおやぎ)    セタシジミ

サラガイアサリハマグリマテガイ
 サラガイ(しろがい)   アサリ    ハマグリ    マテガイ

参考資料
阿部宗明・奥谷喬司・武田正偸.1987.材料料理大事典 魚介I‐II.学習研究社.


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次回の展示テーマ
  
魚の旬 夏 2002年7月1日〜9月30日
 アユ・スズキ・カンパチ…、夏の魚を紹介します。ハモ・ドジョウ・マゴチ・タカベ・ シロギスなどは、産卵期である夏がもっとも美味しいといわれています。