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おさかな情報 No.16   2001年10月

2001年度第3回展示テーマ 築地魚市場:魚の質問

             目         次
はじめに.........1 
質問を考える......2  
「魚の旬を考える」...4
質問ベストテン.....5  
質問 11〜50位...7
おもしろい質問.........8
築地魚市場おさかなニユース
「サンマ」.............9

次回の展示テーマ.......10



はじめに

 おさかな普及センター資料館では、8台の水槽で私たちになじみの深い魚の展示と、年4回ほどテーマを決めてパネルと標本による展示を行っていますが、このほかに市場や魚に関する質問や問い合わせも受け付けています。 その数は
1998−2000年の3年間1500件以上にもなります。 水産関係会社・仲卸業者・卸売業者・東京都衛生検査所からの質問が中心ですが、一般の消費者あるいはマスコミ・出版関係からも多くの質問が寄せられます。 質問内容は、魚類・貝類・エビ・カニ類など市場に入荷する水産生物の名前や生態に関するものだけでなく、利用法・生産量・流通・名前の由来などさまざまな分野にわたっています。 これらの質問の内容は、回答のために調べた内容とともに、データベース化し、展示や資料収集などのための参考にしています。 今回の展示では、質問内容の分析結果、質問の多い内容、おもしろい質問などを関係する標本とともに紹介します。
マジェランアイナメ
 ノトテニア科の魚で、チリ・アルゼンチン・南アフリカから冷凍で輸入される。
 もっとも問い合わせや質問の多い魚


                     一1−




    質問を考える
                     
 問い合わせや質問(以下、質問とします)に答えるために資料を調べたりすることは、水槽やパネルや標本による展示とともに資料館の大切な仕事です。 もちろん、すべての質問に答えられるわけではありません。
いくら調べてもわからないこともありますし、専門的なことでわからない場合は、専門の研究者に直接問い合わせていただくこともあります。

 資料館には1998年から2000年の3年間に1500件以上の質問が寄せられました(図1)。

ここでは、質問者の
職業や質問内容(魚類・甲殻類などの分類群別と、分類(鑑定など〉・生理生態・分布などの項目別〉を分析した結果を紹介します。



    く質問者の職業>

                                   質問者の職業
 
水産問係会社・仲卸業者・卸売業者・東京都衛生検査所など市場の直接的な関係者からの質問が中心ですが、一般の消費者あるいはマスコミ・出版関係からも多くの質問が寄せられます(図2)。
築地魚市場を含む都内から質問だけだけでなく、東京以外からの質問もありますサおよそ60%は電話による質問ですが、市場巡回時や来館されての質問もそれぞれ20%づつあります。













   一2−


   く質問内容 分類群別>
                                  分類群別 質問内容
 魚類に関するものがもっとも多
く、毎年全質問の60−70%を占
めます(図3)。魚類以外では貝・
イカ・タコなど軟体動物についての
質問が多くあります。
魚類では、マジェランアイナメ(ギ
ンムツ・メロ)・ハタ類・フグ類・アジ
類・イワシ類・サケ・マス類
などに
関する質問が多く寄せられます。
これらの魚類は分類(鑑別が)難し
いというだけでなく、食品衛生上の
問題(フグ毒やシガテラ毒など)や
(輸入魚の場合には)輸入手続き
の問題があるためと思われます。
さらに、市場内外の関係者が流
通の過程でより正確で豊富な情
報の提供を目指していることも関
係していると思われます。
魚類以外では、
イカ類・アワビ・
サザエ・カキ・エビ・カニ類
につい
てのものが多くあります。



<質問内容 項目別>
                                 項目別質問内容
 魚類・貝類・イカ・タコ類・エビ・
カニ類など魚市場に入荷する水
産生物の名前や生態に関するも
のだけでなく、利用法・生産量・流
通・名前の由来などさまざまな分
野にわたっています(図4)。この
3年間でほとんどの項目で質問が
増加していますが、特に
査定(鑑
定、名前を調べること)や名称

ついての質問数の増加が目立ち
ます。これは、
JAS法の改正(平
成13年3月31日告示、7月1日
より適用)に伴う食品品質表示(
名称・原産地など)の義務づけ

よる影響が大きいと思われます。




   −3−


     §§§§§§§ 魚の旬を考える §§§§§§§

 「 料理や食材の話には””ということばがよくでてきますが、この””の由来にはアユが関係しています。よく知られているように、魚介・果物などがよく熟して味の最もよい時期、転じて、物事を行うのに適した時期のことをいいます。 古代、朝廷で行われた行事の一つに旬儀(旬の儀式、旬政ともいう)というものがあり、毎月1・11・16・21日 天皇が酒宴をひらいて、臣下に政治について聞きました。 平安中期以降、4月と10月だけ行われるようになり、それぞれ孟夏の旬孟冬の旬と呼びました。 そして、孟夏の旬には扇を、孟冬の旬には氷魚(ひお、アユの幼魚)を賜うならわしでした。 旬儀には季節に適ったものが賜物とされたことから、これが””の由来といわれています」(おさかな情報No.10「川魚と自本人」(2000)より)。
 「
この魚の旬はいつか」という質問が資料館にしばしば寄せられます。 こういう時には、いくつかの料理書を参考にしてお答えしていますが、時々「」の時期が料理書によって違う場合があります。 たとえば、マダイの旬は産卵前の冬から春(春の雌は特に美しくなるのでサクラダイと呼ばれます〉といわれていますが、料理人によっては産卵が終わって体力が回復して冬に備える秋が美味しいともいいます。 これに、南北に長い日本列島周辺のマダイの産卵期を考えると(鹿児鳥では1月下旬から産卵が始まりますが、青森では7月になっても産卵しています。 これは産卵期が水温と関係しているからです)、築地のような大都市の市場では、単純に「いつ頃が旬」と答えられないことになります。 少なくとも産地を考慮してお答えしなければならないことになります。
 「
旬=もっとも美味しい時期」と考えられています.一般論として、「美味しい時期」というのは脂がのる時期で、これは産卵前にあたります。 したがって、は産卵前(または産卵期)ということになります。 しかし、「美味しい」という基準は人 (おそらく文化)によって違いがあるようです。 カツオがよい例です。 カツオは春の魚 (春が旬)  (春と秋が旬と書いてある料理書もありますが)と一般にいわれています。 特に東京では春のカツオを初ガツオと称して珍重しますが、春に関東近海で捕れるカツオより秋から捕れるカツオ(戻りガツオ)の方が脂がのって「美味しい」はずです。 これは、初物を競って食べる風習と考えられます。
築地魚市場には日本各地から魚が入荷します。 もちろん、その種類は地方ごとに特徴があり、また季節ごとに変わります。 ある季節にそこでもっともよく捕れ、おいしい魚が築地には入荷していることになります。 築地は日本中の「
」を集めているともいえます。 輸入魚が食卓にのぽるようになって久しく、また多くの魚が養殖されるようになって季節感が薄れつつある現在ですが、魚の旬について深く理解することは、大都市にある魚市場の意義を考える上でも大切であると考えます。

ここでは、
を考える第一歩として、大石圭一著「かれい その裏とおもて」(厚生社厚生閣、1977)からについての輿味深い考察を紹介します。 以下は、元北海道大学教授の大石圭一博士(食品学)が、京都大学在学中に受けた清水亘教授の講義の中で「」に触れたくだりです。

 多くの魚は産卵前または産卵期が美味で産卵後急に味が落ちる。

産卵前=旬(春産卵するものが多いから、冬美味なものが多い)
(晩秋から早春も含む):寒ブナ・寒ブリ・コノシロ・シラウオ・マダイ・ヒラメ・アンコウ・トラフグ・クロマグロなど多くの魚
サクラマス・トビウオ・サワラなど
アユ・スズキ・チダイ・アイナメなど

産卵期=旬(夏に美味なものが多い)
ドジョウ・ハモ・タカベ・イサキ・マアジ・カツオ・マゴチ・カワハギ・シロギス・シイラ・キハダなど多くの魚
サンマ・バショウカジキ
サケ・ボラ・マダラ・ムツ・マツカワなど
ワカサギ・サヨリ・メバチ・ビンナガなど

 魚の味は脂肪含量とも並行している。 脂肪の多い時に魚の味もよい。 …何れにしても産卵と耐寒のため、あるいは餌料と生活環境のため脂肪が蓄積され、同時に美味なる成分も増加するのである。


           一4一

  質問ベストテン

 当館に奇せられた質問を、件数の多かった順に紹介します。( )は間い合わせ件数。

1.Qメロまたはギンムツとは何か(29)majeran
スズキ目ノトテニア科のマジェランアイナメ(表紙の図)。 大きいものは1.5mを超えます。 南極をとりまくように分布し、水深200m付近の海底にすんでいます。 チリ、アルゼンチン、南アフリカ、ニユージーランドなどで漁獲され、頭と内臓を落とした冷凍品で輸入されます。 切り身で販売され、焼魚、煮魚、かす漬けなどに利用されます。

2.Q魚貝類の旬について教えてほしい(20)
前ぺ一ジ「魚の旬を考える」参照

3.Qハタ、クエ、アラは同じ種類か(18)
ハタは八夕科の魚の総称、クエは八夕科の魚の一種、アラは八夕科(以前はスズキ科に入れられていた)の魚の一種またはハタ類の博多での呼び名。 ハタ類は白身で人気のある魚ですが、大量にとれる魚ではないので、日本各地だけでなく、東南アジアなど外国産のものも入荷します。大変分類の難しい魚の一つで、シガテラ毒(おさかな情報13参照)を持つ種類もいます。このため、市場内外から多くの質間が奇せられます。

4.Qフグの種類について教えてほしい(12)
よく知られているように、食品衛生法により取り扱いが厳しく制限されています(おさかな情報12参照)。築地魚市場では毎日、東京都市場衛生検査所の所員が監視を行っていますが、時々取り扱いのできる22種類以外のフグ類が混じっていることがあります。 そういうフグ類の鑑定の確認などに資料館が協力しているため、魚類の質問のなかで上位に位置しているわけです。 詳しくは、おさかな惰報12を参照して下さい。

5.Q魚の飼い方について教えてほしい(11)
魚の飼育方法は魚の種類、大きさ、数、水槽の大きさなどによって異なります。 このような質問が寄せられたときには、初めて飼育するのであれば何をどのように飼いたいのかを、すでに飼育中であれば魚の状態を詳しくお聞きした上で資料館での飼育の経験にもとづいてお答えしています。

6.Q
シルバーとは何か(10)
スズキ目イボダイ科の魚で、70cmを超えます。ニュージーランドとオーストラリア南部に分布し、水深200m付近の海底にすんでいます。 ニユージーランドで漁獲され、頭と内臓を取った冷凍品で輸入されます。自身で赤い血合があります。 切り身で販売され、焼魚やかす潰けなどに利用されます。 ギンヒラスやオキブリなどと呼ばれることもあります。

7.Q魚を調理したら身が溶けてしまったのはなぜか(9)
魚に寄生する原虫類に粘液胞子虫と微胞子虫があります。 大きさは数ミクロンなので、肉眼で見ることはできません。 これらの胞子虫は筋肉中に集まって、シストと呼ばれる米粒のようなかたまりを作ることもあります。 魚が生きている間、胞子虫は周囲から栄養を取り込んでいます。 しかし、魚が死ぬと胞子虫も死んで、胞子虫の体内にあったタンパク質を分解する酵素が流れ出し、魚の筋肉を溶かすものと考えられています。 魚の肉が柔らかくなったり溶けているものをジェリーミートと呼びます。 ジェリーミートは、魚の死後しばらくしてから起きるので、事前に区別することは困難です。 なお、胞子虫は食べても害はありません。

8.Q「のれそれ」とは何か(9)
ウナギ類の葉形仔魚(レプトケパルス)です。 アナゴやウナギ、ハモなどウナギ目の魚の仔魚は、浮遊生活をするために柳の葉に似た形をしています。 その後、平たい体は丸くなり、親と同じような体形に変化します。 築地市場に入荷する「のれそれ」の種類を調べたところ、マアナゴでした。 「のれそれ」は高知県での呼び名です。

9.Qトラウトとは何か(9)
ニジマスのうち、海に下るもの(スチールヘッドと呼ばれる)。 最近ではチリで養殖されたものが冷凍で輸入されています。


10.Qバターフイッシユについて知りたい(9)
スズキ目マナガツオ科の魚。 日本のイボダイ(イボダイ科)に大きさ、形ともよく似ていますが、腹鰭がないことで区別できます。 北米の大西洋岸に分布しています。 冷凍で輸入され、干物に加工されています。





    質問 11〜50位

No. 質問内容(件数)       解答

11.赤イカと白イカ(8) どちらもケンサキイカ
12.ナイルパーチ(7) ナイル川原産のスズキ目アカメ科の魚でスズキの代用
13.アワビの種類(7) 日本にはクロ、マダカ、メガイの3種(エゾで4種)
14.輸入のサザエ(7) アカニシなどサザエでない貝をサザエとし問題となる
15.東京湾の魚(6) マアナゴ、スズキ、ボラ、マイワシ、マコガレイなど
16.タイセイヨウサケ(6) 北大西洋原産のサケ科の魚。各地で養殖、輪入される
17.ソデイカ(6) タルイカ、アカイカとも呼ばれる大型のイカ
18.イワガキ(6) 日本沿岸の岩場にすむカキの一種(おさかな情報15)
19.ピルチャード(5) 北部北大西洋にすむイワシの一種
20.コシナガ(5)  南日本以南にすむマグロの一種〈おさかな情報9)
21.サケとマスの違い(5) マス(サクラマス)には黒点があるがサケにはない
22.ギンガメアジ(5) 暖流にすむアジの一種でシガテラ毒を持つことがある
23.鳴門骨(5) 血管棘の一部が丸く変形したもの
24.ペヘレイ(5) 南米原産のトウゴロウイワシ科の魚で国内でも養殖
25.ランプフィッシユ(5) 北大西洋産ダンゴウオの一種で卵はキヤビアの代用
26.マグロの種類〈4) 世界に7種類(おさかな情報9)
27.スギ(4) スギ科の魚で台湾や沖縄で養殖されている
28.ワレフー(4) ニユージーランドにすむイボダイ科の魚
29.カラフトシシヤモ(4) 北極をとりまいて分布し、シシヤモの代用
30.マダイの産地(4) 明石、走水、佐島、長崎など
31.キスの異臭(4) 餌由来と言われるが詳細は不明
32.モンゴウイカ(4) ヨーロッパコウイカ、トラフコウイカなど
33.貝を茹でても開かない(4) 加熱によるタンパク質変性と恩われるが詳細は不明
34.カラコール(4) 西アフリカ産のガクフポラ科の巻貝類で数種を含む
35.ダンジネスクラブ(4) イチョウガニの一種で北米西岸とヨーロッバにすむ
36.アメリカンロプスター(4) 北米北東岸にすむアカザエビ科のエビ
37.カニの数え方(4) 1ぱい2はい
38.アカマツダイ(3) 主に東南アジアで漁獲される赤い大型のフエダイ類
39.ウナギ(3) (おさかな情報7)
40.ガストロ(3) 南半球にすむサバ科の魚で大きな鱗がある
41.ゴマシズ(3) イポダイに似るが黒点があり、中毒のため食用禁止
42.サッパ(3) イワシの一種で岡山で「ママカリ」と呼ばれ食用
43.タイセイヨウサバ(3) 北大西洋にすむサバの一種で輸入され干物などにする
44.ブリ(3 アジ科の魚で成長とともに名が変わる出世魚
45.マダラの雌雄(3) 外見では区別できない
46.コノシロの成長(3) 1年10cm、2年15cm、3年18cm、4年20cm
47.魚の年齢(3) 耳石や鱗の輪数を数える
48.しこいわし(3) カタクチイワシの地方名
49.主な漁法(3) 旋網、刺網、曳網、定置網、釣りなど
50.主な輸入魚(3) マグロ類、サケ類、ウナギ類、タラ類など



   おもしろい質問(五十音順)
質問内容    解答

赤身と白身のちがい 筋肉中のミオグロビンとヘモグロビンの量
アサリが昔に比べ塩辛い 昔は網(海水なし)、今は海水パックで運ぷ
アワビのキモで中毒するか 春先、中腸腺(ツノ)に光過敏症原因物質あり
アワビの雌雄の見分け方 生殖腺の色が雌は緑色、雄は白
ウニの雌雄の見分け方 生殖腺の色(雌は橙色、雄は白みがかる)
江戸前とはどこか 本来は深川から羽田まで
「おきゅうと」は何で作るか 紅藻のエゴノリ
数の子の由来 昔ニシンをカド(糧:かての意)と言った
カニみそは内臓のどこの部位か 肝臓、膵臓
カツオの身に付く寄生虫は何か 条虫のテンタクラリア
クジラとイルカの違い 約5mより大=クジラ、小さい=イルカ
魚から作ったノリがあるか 古くはニベ類の鰾(うきぶくろ)をノリにした
桜鯛は何か 桜の頃のマダイ(の雌)、ハタ科の魚
サザエの年齢の見分け方 殻の成長線で見るが地域差が大きい
サヨリの大きいものをカンヌキ 閂(かんぬき)に使う木のようだから
サンマに鰾(うきぶくろ)はあるか ある
しよっけいコンブは何か だし系コンブに対し食(用)系コンプ
しらすは何の魚 マイワシ、カタクチイワシ
大正エビの名前の由来 大正丸が漁獲
タイのタイは何か 肩甲骨と烏口骨(うこうこつ)
タコの雌雄 雄は腕の1本が変形(交接腕)している
タラコの1腹の卵数 20万から30万粒
ちり鍋の名前の由来 湯に通した魚の身がチリチリと縮むから
月夜に魚が網にかからない 光に敏感な魚は月明かりがあると動かない
トロ箱の由来 トロール網で漁獲された魚を入れた箱
ナマコの数え方 1ぱい、2はい・・・
ナイルパ一チとは何か ナイル川原産のアカメ科の魚
日本3大珍味とは 肥後からすみ、三河このわた、越後うに
ハッカクは何か カサゴ目トクビレ科のトクビレ
蛤や蜆はなぜ虫偏か 虫は古代中国で動物を表わす文字だった
ヒイカは何か 本来ボウズイカの富山での呼び名
ブリの出世名(関西) わかな、つばす、はまち、まじろ、ぶり
ブリの出世名(関東) わかし、いなだ、わらさ、ぶり
ホヤは何の仲間か 脊索動物で脊椎動物に近い
ホタテガイの中腸腺はどこか 貝柱の周りにあるヒモの黒い部分
ボラの出世名 おぼっこ、すばしり、いな、ぼら、とど
水雲と書いて何と読むか もづく
養殖のサケ類が生食できる理由 餌から寄生虫の幼虫が入らないから
 
           一8一

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 === 築地魚市場おさかな二ユース ===

サンマ

 秋の魚といえばサンマと答える方が多いのではないでしようか。 漢字でも秋刀魚と書くほどサンマは、この季節、日本人にとってなじみの深い魚です。 平成11年の統計によると日本のサンマの漁獲量は
141011トンでした。 これは日本の総漁獲量の2.7%にあたります。 塩焼、蒲焼や押し寿司のほか、最近では刺身で食べることも多くなってきました。 一方、その生活ぷりは一般にはあまり知られていません。 ここでは最近の研究の成果を中心にサンマの生活について紹介します。

 
サンマはダツ目サンマ科の魚です。 サンマ科の魚は世界に4属4種が知られています。 サンマは北太平洋に広く分布し、その他の3種はそれぞれ北大西洋と南半球、大西洋、東太平洋中部に分布しています。

雌雄

 雌雄には外見上の差があるといわれることがあります。 本によっては、下あごの先端が「雄ではオリーブ色で丸みを帯び、雌では黄色で細くとがっている」とあります。 そこで市場に入荷したサンマを資料館で解剖しました(1999年)。 当日は、下あごの先端が黄色のサンマしかありませんでした。 無作為に6個体を解剖したところ、雄と雌が3固体づつでした。 このことから、少なくとも下顎の先瑞の黄色は雌雄と無関係であることがわかりました。 なお下あご先端の黄色の部分は、体長10cmぐらいですでに色づいていますが、その役割はわかっていません。

産卵
 秋から初夏にかけて産卵しますが、産卵する場所は季節によって異なります。 主な産卵場は春から初夏にかけては福島県から三陸沖、秋は常磐沖、冬は鹿児島県沖です。体長20cmを超えると産卵が始まります。1匹の雌のサンマは数日ごとに産卵し、3〜4ヶ月産卵を続けます。卵は長径1.7〜2.2mm、無色の楕円形で約20本の付属糸があります。 流れ藻などに産みつけられた卵は、発生が進むと青く色づき、受精後10〜14日で孵化します。

成長
 生まれたばかりのサンマの大きさは6〜7mmです。 その後200日前後で15〜24cm、7〜8ヶ月で25〜28cm、1年で30cmを超えます。 以前は大型のものは2年以上生きると考えられていましたが、最近、耳石の日周輪の調査や飼育実験により年魚(1年で一生を終える)であることが明らかにされました。


回遊

 春になると餌を求めての回遊が活発になり、黒潮とともに北上を始めます。 4月に常磐沖、5〜6月に三陸沖、7月には北海道東部から千島列島南部沖に達します。 餌となるプランクトンは親潮と黒潮の潮境に多く発生するので、潮境とサンマの移動は一致しています。 サンマが好む水域の水温は12〜20℃です。 8月初旬になると水温と日照時間の変化が刺激となり、南下を始めます。 8月下句に北海道東部沖、9月中句から10月下句に三陸沖、11〜12月に常磐沖、1月には本州南部沿岸からやや沖合に移動します。


 プランクトン食で、浮遊性の甲殻類、魚卵、稚魚、オキアミなどを食べます。 胃と幽門垂(ゆうもんすい)がなく、腸で消化吸収が行われます。 腸は曲がることなくまっすぐに延びています。 時おりサンマの腹から魚の鱗が出てきて、魚を食べているのかなと思うことがあります。 これは漁獲の時にサンマの鱗が落ち、それを飲み込んでしまったためです。

青い骨
 新鮮なサンマを焼いて食べると、身を外した後の骨が鮮やかな青い色をしていて驚くことがあります。 これは、サンマの体表や骨に青緑色の胆汁色素の一種であるビリベルジンと結びついたタンパク質があるためです。

参考資料
落合 明・田中 克.1998.新版 魚類学(下)改訂版.恒星社厚生閣.
鴻巣章二(監).1994.魚の科学.朝倉書店.
津崎 順.2000〜2001.サンマの飼育と展示I〜IV.アクアマリンふくしまニユーズ.
長澤和也・鳥澤 雅(編).1991.漁業生物図鑑 北のさかなたち.北日本海洋センター.


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次回の展示テーマ

   「サケ・ママス」
   2002年1月5日〜3月30日
 サケ・マス類は私たちになじみの深い魚の一つです。サケ(シロザケ)は放流事業の成功により供給量は安定していますが、同時にタイセイヨウサケ・ベニザケ・カラフトマス・スチールヘッドなど多くの種類が輪入されています。展示では、築地魚市場に入荷する種類を中心にサケ・マス類を紹介します。



                 一10一