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おさかな情報 No.13

2001年1月          「有毒魚

始めに

 私たちになじみ深い魚にも、フグ類、一部のアジ類、ハタ類、ブダイ類、カマス類などのように体内に毒を持つもの、オニオコゼやミノカサゴのように鰭の棘に毒を持つもの、ウナギ類のように血液や粘液に毒を持つものがいます。
築地魚市場では何よりも食品としての安全性を考えて適切に取り扱われていますが、私たち自身も有毒魚について正しい知識を持つことが大切です。
展示では、様々な毒魚、毒の種類と特徴、安全な食生活のための情報などを提供します。
バラフエダイ
                          
バラフエダイ Lutjanus bohar

毒魚とは
 一番よく知られているのがフグ、フグ類と同様に筋肉や内臓などに毒をもつ魚にアジ類、ハタ類、フエダイ類、ブダイ類、カマス類などがいます。この他、卵、体表の粘液、血清、鰭の棘などにもつ魚もいます。毒の種類によっては危険なものも有り、このように私たちの生活にとって有害な魚を毒魚と呼んでいます。

毒の種類
< 
フグ毒 >
 フグ毒はNo.12「フグと日本人」で書いてあり、今回は有りませんがNo.12より抜粋しました。(機会が有りましたらバックナンバーもご紹介します)
フグ毒の正体はテトロドトキシンという物質です。フグ毒は体内で作られているのでは無く、外部から取り込まれ、体内に蓄積される。フグ毒はフグだけで無く魚類(ツムギハゼ)、魚類以外の脊椎動物(カエル、イモリ)、甲殻類(カニ)、棘動物(トゲモミジガイ(ヒトデの一種))、貝類(ボウシュウボラ)、頭足類(ヒョウモンダコ)、その他(ヒラムシ、ヒモムシ、ヤムシ、エラコ)、海藻(石灰藻)などからも見つかっています。

< 
シガテラ毒 >
 フグについで注意をする必要のある毒、世界中で毎年2万人以上も中毒している。日本でも最近では南九州でイシガキダイの刺身によるシガテラ中毒が起こりました。
症状は食後30分から数時間ほどで現れ、消化器系、循環器系、神経系などに様々な異常が見られます。最も特徴的な症状はドライアイスセンセーションと呼ばれるもので、たとえば暖かいものを冷たく感じるというものです。一般に回復には時間がかかり、完全回復には数ヶ月かかることもあると言われています。死亡率は低いと言う特徴も有ります。


 最近の研究でシガテラ毒素はシガトキシンマイトトキシンであることが解りました。
これを作るのは石灰藻などの海藻の表面に付着しているプランクトン(渦鞭毛藻{うずべんもうそう}の1種)であることも解りました。図のように食物連鎖により魚の筋肉や内臓に蓄積されます。毒性は魚の種類、固体、居る場所、時期、等で異なり藻食魚より肉食魚、小さい魚より大きい魚のほうが毒性が高くなります。
これには毒素を作るプランクトンの量や分布、食物 連鎖のしくみなどが関係しています。
 原因プランクトンの分布、シガテラ毒魚の分布、中毒の発生地域から見ると南方の海域の魚はすべてシガテラ毒魚になる可能性があることになります。実際には現在、300〜500種がシガテラ毒魚といわれています。
この中には食用魚として重要なアジ類・ハタ類・フエダイ類などの魚も含まれています。これらの魚は、最近、東南アジアなど南方海 域からの魚の輪入も多くなっているので、注意する必要があります。アジ類・ハタ類・フエダイ類にはインド・西太平洋海域に広く分布する種類が多いので、同じ種額でも日本近海域のものは安全なのに、南方海域で捕れたものはシガテラ毒魚になっている可能性があるからてす。  


 1.沖縄       7.ギルバート諸島   14.フェニックス諸島  21.ツァモツ諸島
 2.マリアナ諸島  8.ニューブリテン    15.ジョンストン島      22.ココス島
 3.ニューギニヤ  9.ニューヘブリデス   16.ミッドウエー島     23.ファン.フェル
 4.オーストラリヤ 10.ニューカレドニヤ   17.ハワイ諸島        ナンデス諸島
 5.ウェーキ島   11.フィジー諸島     18.ライン諸島       24.キューバ
 6.マーシャル諸島 12.トンガ島       19.ソシエテ諸島     25.ジャマイカ島
             13.サモア諸島     20.マルケサス諸島  
       シガテラ中毒の起こる主要地点

血清毒と粘液毒
 ウナギ、マアナゴ、ハモなどウナギ類の血清(血液から赤血球や白血球などの成分を取り除いた残りの液体)や体表の粘液には毒素が含まれています。
これらの魚の血液を大量に飲むと下痢などのほか呼吸困難、時には死亡すると言われています。血液が目に入ると激しい痛みなどの症状が出ます。傷口から入ると炎症などを起こします。粘液毒も同じような症状が出る可能性が考えられています。
調理をするときには十分注意する必要があります。ただし、50〜60℃・5分間の加熱で毒性がなくなることがわかっているので、蒲焼きなどで食べれば全く問題ありません。

そのほかの毒
 (ウナギ類以外の魚の)粘液毒、卵の毒、アオブダイの肝臓の毒(パリトキシン、最近西日本で中毒例あり)、鰭などの棘にある刺毒など様々なものがあります。


様々な魚毒(食用とされるものを中心に)
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毒の部位   毒を持つ魚の科と種類
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粘液      ハコフグ科    ハコフグ
       ヤツメウナギ科 カワヤツメ(ヤツメウナギ)
         タウェガジ科   ナガヅカ・タウエガジ
肝臓     ブダイ科     アオブダイ
          カワハギ科   ソウシハギ
鰭の棘    アカエイ科   アカエイ
          フサカサゴ科 オニオコゼ・イズカサゴ・ 
                     オニダルマオコゼ・フサカサゴ
          アイゴ科    アイゴ

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   魚名の由来    一ドクと名の付く魚
 日本とその周辺海域にはおよそ3800種類の魚がすんでいますが、標準和名に「ドク」が付く魚が3種類います。
ドクウツボ(ウツボ科)・ドクウロコイボダイ(ドクウロコイボダイ科)・ドクサバフグ(フグ科)です。
それぞれの名前の由来を調ぺてみました。

ドクウツボ(ウツボ科)Gymmothoraxjavanicus(Bleeker)
 インド・太平洋のサンゴ礁域の浅い所にすむウツボです。シガテラ毒を持つことから名付けられたものと思われます。


ドクウロコイボダイ(ドクウロコイボダイ科)
Tetragonurus  cuvieri Risso
 世界中の熱帯・温帯海域の中層を泳いでいます。1953年に阿部宗明博士(おさかな普及センター資料館名誉館長、1911−1996)が和名を付けました。博士は論文中で特に触れてはいませんが、おそらく古い中毒事故(1810年、地中海)を参考に名付けられたと思われます。


ドクサバフグ(フグ科)
Lagocephalus lunaris(Bloch and Schneider)
 1959年10月16日小倉市(現北九州市の一部)でベトナム沖で漁獲された、(当時無毒と考えられていた)“サバフグ”よく似たフグの肉を食ベて4人の死者が出ました。このフグの鑑定を依頼された阿部博士は(1960)、“サバフグ(現在のシロサバフグとクロサバフグ、おさかな情報No.12参照)”とは異なるサバフグ属の1種であると鑑定し、毒性が強いことから、このフグにドクサバフグという和名を付けました。主に東シナ海からインド洋・南アフリカに分布しますが、静岡県、山口県、鳥取県、長崎県沿岸で捕れたという報告があります。

 その後の研究により、肉だけでなく皮・肝臓・卵巣・腸などにも強い毒性を持つことがわかりました。もちろん、食用にはできません。

 このほかにも、いくつかのシガテラ毒を持つ魚に「ドク」が付いていたことがあります。ドクヒラアジ(標準和名:カスミアジ)、アカドクタルミ(バラフエダイ成魚)・フタツボシドクギョ(バラフエダイ幼魚)、ドクカマス(オニカマス)などです。現在、これらの名前は使われていません。



築地魚市場での有毒魚の取扱

築地魚市場では有毒魚は次のように取り扱われています.
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 通達者     魚種      毒の種類       措置
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国(厚生省)  オニカマス   シガテラ毒      
全て廃棄
         “イシナギ”    ビタミンA過剰   
肝臓のみ廃棄
         バラムツ     ワックスエステル  
全て廃棄
         アブラソコムツ ワックスエステル  
全て廃棄
         ホシゴマシズ  グリセリルエーテル 
販売禁止
         アオブダイ    パリトキシン     
販売禁止

東京都     アブラボウズ  グリセリド    
加工用にすること
(衛生局長)  ナガズカ     リン脂質       
卵巣を除去

市場街生    ドクウツボ     シガテラ毒     
販売中止
 検査所   バラハタ      シガテラ毒      

         アカマダラハタ  シガテラ毒      
         マダラハタ     シガテラ毒      
         ギンガメアジ   シガテラ毒      
         カスミアジ     シガテラ毒      
         バラフエダイ   シガテラ毒      
         イッテンフエダイ シガテラ毒      
         ヒメフエダイ     シガテラ毒      
         イトヒキフエダイ シカテラ毒      
         ムネアカクチビ  シガテラ毒      
         キツネフエフキ  シガテラ毒      
         サザナミハギ   シガテラ毒      
        オオメマトウダイ ワックスエステル
 加工用にすること


主な有毒魚  一部だけ紹介

 ここでは、市場に流通し食晶衛生上間題となる可能性のある魚を紹介します。


ドクウツボ(ウツボ科):
毒の種類:シガテラ毒
分布
:琉球列島以南インド・大平洋。
生態:サンゴ礁にすみ、ほかの魚を食べる。
似ている魚との見分け方
黒い触孔(えらあな)と体の斑紋.

オオメマトウダイ(オオメマトウダイ科)
毒の種類:ワックスエステル
分布:南半球、北太乎洋、西大西洋.
生態
:水深600m〜1600mにすむ。
似ている魚との見分け方
体は黒く鱗があり、体高が高い





ギンガメアジ(アジ科)
毒の種類:シガテラ毒
分布:茨城県以南、インド・太平洋。ギンガメアジ
生態:内湾やサンゴ礁にすみ、小魚などを食ベる。
似ている魚との見分け方
口が大きく、鰓蓋上部に小黒点がある。吻は短い。



バラフエダイ(フエダイ科)
毒の種類:シガテラ毒
分布:紀伊半島以南、インド・中部太平洋。
生態:岩礁やサンゴ礁にすみ、小魚などを食ベバラフエダイる。
似ている魚との見分け方
赤みを帯びた体色と、吻にあるミゾ。



イッテンフエダイ(フエダイ科)フエダイ
毒の種類:シガテラ毒
分布:琉球列島からインド.中部太平洋.
生熊:岩礁やサンゴ礁にすむ。
似ている魚との見分け方
前鋤骨歯帯の形、体色と斑紋。


ヒメフエダイ(フエダイ科)
毒の種類:シガテラ毒
分布:相模湾以南、インド・中部太平洋。
生態:岩礁やサンゴ礁にすむ。
似ている魚との見分け方
高い体高と前鰓蓋骨の切れ込み、体色。





ムネアカクチビ(フエフキダイ科)
毒の種類:シガテラ毒
分布:沖縄県以南、インド・西太平洋。
生態:沿岸の砂地や岩礁にすむ。
似ている魚との見分け方
胸鰭基部の赤斑と体の模様。

キツネフエフキ(フエフキダイ科)
毒の種類:シガテラ毒
分布:鹿児島県以南、インド・西太平洋。
生態:沿岸の砂地や岩礁にすむ。
似ている魚との見分け方
長い吻と背中から側腺までの鱗の数。


アオブダイ(ブダイ科)アオブダイ
毒の種類:パリトキシン
分布:房総半島から琉球列島まで。
生態:岩礁にすみ、サンゴやスナギンチャクを食ベる。
似ている魚との見分け方
歯の形と体色。


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   築地魚市場おさかな二ユース

貝毒
 貝類は、古くから食料として利用され、現在でも重要な水産物の一つです。しかし、いつも食べている貝でも地域や季節、年によって毒を持ち、食中毒を起こすことがあります。このように貝類が持つ毒を総称して貝毒と呼んでいます。
 貝毒には様々な種額があり、その毒によって毒化の仕組みや中毒の症状などが異なります。
ここでは毒の種類ごとに紹介します。

麻痺(まひ)性貝毒
 プランクトンの渦鞭毛藻(うずベんもうそう)の仲問や藍藻(らんそう)の仲間によって作られます。毒の成分は、サキシトキシンやゴニオトキシンとその関連毒です。この有毒プランクトンを多量に中腸腺食ベた貝は、中腸腺に毒が蓄積しますが、筋肉は無毒です(例外としてスぺインでセイヨウトコブシ(巻貝)の筋肉が毒化したことがあります(おさかな情報No.10参照)。)ホタテ
 これまでに毒化が報告されているのはアカガイ、ムラサキイガイ、ホタテガイ、ヒオウギガイ、マガキ、ウパガイ、サラガイなどの二枚貝がほとんどです。北米やヨーロッパの大西洋岸ではヨーロッパエゾバイやヨーロッパボラなどの巻貝が毒化し、食中毒が起きています。
 麻庫性貝毒によるおもな症状は、フグ毒と同じく運勤神経の麻痺です.食後30分ほどで口や額のしびれ感が現れしだいに広がり、麻痺に変わります。言語障害や頭痛、嘔吐などがあり、重症の場合には呼吸麻痺により死亡します。食用の二枚貝が毒化し致死率も高いため、国によって厳しい監視体制がとられています。
 各生産地の水産試験場では、1年を通して有毒プランクトンの発生量と貝に含まれる毒量を検査していてます。毒の量が基準値をこえると出荷停止となり、検査によって安全が確認されるまで出荷されないようになっています。
 しかし、ホタテガイでは中腸腺が大きく独立しているので、この部分(ウロと呼ばれる)を取り除いて出荷されます。また、ホタテガイは有毒プランクトンが発生しない時期であっても、安全を確認し検査済みのシールを貼ることが義務付けられています
* 中腸腺: 貝やイカ、タコ、甲殻類にある食物を消化する組織。胃などのまわを取り囲むようにあり、食物を取り込んで消化したり、消化酵素を出すなどの働きがあります。

下痢(げり)性貝毒
 麻痺性貝毒と同じく渦鞭毛藻の仲間によって作られます。
毒の成分はオカダ酸をはじめ沢山の種類が見つかっています。毒の種類によって症状の程度や発生する時期、海域が違います。
 毒化の仕組は麻痺性貝毒と同じで、下痢性貝毒を作る渦鞭毛藻を食べた二枚貝の中腸線に毒が蓄積します。これまでに毒化が報告されているのはムラサキイガイ、ホタテガイ、チョウセンハマグリ、アサリなどです。
 おもな症状は激しい下痢ですが、死ぬことは有りません。
この毒も各産地で検査が行われ、安全を確認して出荷されています。ムラサキイガイやアサリの中腸線はホタテ貝のように独立していないので、毒の量が下がるのを待たなくてはなりません。
唾液腺(だえきせん)毒
 肉食性巻貝の唾液腺の中に含まれる毒です。毒の成分はテトラミンです。有毒プランクトンによる二枚貝の毒化と異なり、テトラミンは貝自身が持っているものと考えられています。
 貝の種類はエゾバイ科のヒメエゾボラ、エゾボラ、エゾボラモドキ、ヒメエゾボラモドキ、スルガバイ、アヤボラ、チョウセンボラ、フジツガイ科のボウシュウボラやテングニシ科のテングニシなどです。これらの貝はどれも肉食で、おもな症状は頭痛、めまい、船酔い感などで、食後30分ぐらいで現れます。
 ちようど酒を飲んだのと同じような感じで、数時間で回復します。毒量は貝によって個体差があり、また食べる人の方にも毒に対する強さには個人差があるようです。
 東京都では、これらの巻貝を食用とするにあたって、唾液腺を除去するように指導しています。唾液腺はエゾバイ科の貝の場合、淡黄色をした一対の小豆大の器官で、外套膜をめくると見えます。
   

そのほかの貝毒
  
名称     毒の種類     原因    症状    貝の種類   中毒発生地域
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記憶裏失性貝毒 ドウモイ酸 プランクトン 嘔吐・記憶障害 ムラサキイガイ カナダ
神経性貝毒  プレペトキシン プランクトン 神経障害 マガキほか 二ユージーランド
下痢を伴う毒
 アザスピロ酸  プランクトン 堰吐・下痢  ムラサキイガイ オランダ
バイの毒   スルガトキシン   細菌   視力減退など   バイ        静岡県
卵巣の毒     コリン     不明    じんましん   エゾワスレガイ   北海道

参考資料
野口玉雄.1996.フグはなぜ毒をもつのか 野口玉雄.安部宗明.橋本周久.1997.有毒魚介図鑑  塩見一雄.長島裕二.2000.海洋動物の毒 橋本芳郎.1977.魚介類の毒 檜山義夫.安田富士郎.1972.中部南太平洋有用有毒魚図鑑 飯田 遥.1971.Stromateus maculatus  小西英人.1995.  新さかな大図鑑 中坊徹次編.1993.日本産魚類検索 Randall,J,E. 1980. A survey of Ciguatera at Enewetak and Bikini,Marshall islands,<以下省略> 豊田直之.西山徹.本間敏弘.釣り魚カラー図鑑 西東社 2000:

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