おさかな情報   No.1  1998年1月
1997年度第4回展示テーマ

       
築地市場の珍しい魚
             
                    マジェランアイナメ
              
                       メルルーサ
             
                     シルバーホキ

はじめに                 1       
展示標本リスト           2        
マジェランアイナメ         3       
オーストラリアのサワラ      3       
メルルーサ             4       
日本に輸入される水産物     5       
80年前の東京市場の鮮魚    5     
日本最大級のモンダルマガレイ   6     


はじめに
 築地市場は、世界最大の魚市場と言われています。乎成8年の水産物の総取扱高は628,567tでした。これは、1年間に国内で食用として消費される水産物の7%に当たります。量だけではなく種類も豊富で、市場年報に掲載される魚だけでも約140種になります。統計に現われない種類も多く、当館が1年問調べた結果330種を越えました。毎日市場の中を歩いていると、イワシ、サケ、タラ、アジ、タイ、マグロ、ヒラメといったおなじみの魚か多く見られますが、中には普段見かけない魚に出会うことがあります。その理由には…
1.外国産であまり入荷しない
2.国産だが量が少なく流通しない
3.普通の種類だが形や色が変わっている
といったことが上げられます。今回は、このような食用魚の中の「珍しい魚」を紹介します。


参考資料
東京都業務部業務課・1997.東京都中央卸売市場の水産物取扱高況・築地市場おさかな普及センター資料館年報,(16):27・28.


マケレル
      オーストラリアンスポッテッドマケレル
      Scomberomorus munroi (Collette & Nauen,1983より)


展示標本リスト

No.  科名         種類                  産地
1  ニシン      トリシェード              インド
2  サケ       シナノユキマス            長野県(養殖)
3  サヨリ      カクザヨリ                オーストラリア
4  メルルーサ   メルルーサの一種          南米パタゴニア
5  フサカサゴ   ボカッシオ                メキシコ
6  フサカサゴ   メキシカンロックフィッシュ      メキシコ
7  フサカサゴ   バーミリオンロックフィッシュ     メキシコ
8  フサカサゴ   グリーンブロッチドロックフィッシュ カナダ
9  フサカサゴ   ホノオカサゴ              オーストラリア
10 フサカサゴ   ミナミユメカサゴ            ニュージーランド
11 ホウボウ    キマダラソコホウボウ         ニュージーランド
12 コチ       ダスキーフラットヘッド         オーストラリア
13 ハタ       オオスジハタ              パキスタン
14 キス       キングジョージホワイティング    オーストラリア
15 アマダイ     トサカアマダイ             フロリダ
16 タイ        マルダイ                 アフリカ
17 タイ        ゼブラ                   アフリカ
18 タイ        スコッツマン               アフリカ
19 アゴアマダイ  ジャイアントジョウフィッシュ      カリフォルニア
20 ノトセニア    マジェランアイナメ           南米パタゴニア
21 サバ       ブロードバードキングマカレル    オーストラリア
22 サバ       クイーンズランドスクールマカレル  オーストラリア
23 サバ       オーストラリアンスポッテッドマカレル オーストラリア
24 ダルマガレイ  モンダルマガレイ            三宅島
25 カレイ       マコガレイ逆位(左向き)       福島県
チズ1-1

マジェランアイナメ
 最近、銀ムツやメロといった魚の名をよく見かけます。惣菜用の切り身としてスーパーなどで売られていますが、皮が黒っぽく鱗がやや大きい白身の魚ということしか、その姿からはわかりません。名前や身質からアイナメに近いギンダラや、スズキの仲間のムツの仲間だと思う方が多いようです。しかし、これはマジェランアイナメというノトセニア科の魚なのです。ノトセニアの仲間は、南極とその周辺海域にだけ分布し、普段私たちが見る機会はありません。マジェランアイナメは、南米南部、南アフリカなどに分布しています。休長は1mを越え、比較的資源量も豊富なため、漁業対象種となっています。日木には、北洋のギンダラの代用で入ってきたようですが、現在ではすっかり市民権を得ています。メロは元来アルゼンチンでハタをさす言葉だったのが、取り違えて導入されたようです。マジェランアイナメは、当館の前館長であった故阿部宗明博士が命名したものです。

考資料
阿部宗明・1972.マジェランアイナメ(新称).新顔の魚,3.伊藤魚学振興財団.
Fischer,W.and J.C.Hurean(cds).1985.FAO species identification ..........
Miller,R.G.1993.A history and atlas of the fishes of ........
.
中村泉紀・1986.パタゴニア海域の重要水・海洋水産資源開発センター.369pp.


アイナメ 
                  
            マジェランアイナメ 
Dissostichus eleginoides


オーストラリアのサワラ
 日本では、毎年30,000t近いサワラ類が消費されています。このうちの約23,000tは中国などから輸入されたものです。サワラ類は日本周辺に6種、世界中で約20種ほど知られていますが、輸入ものも含めて出回っているものの大部分は日本周辺や東シナ海に分布するサワラです。
ところが、最近、築地市場で珍しいサワラを見かけるようになりました。ここに紹介するオーストラリア産の3種です。日本のサワラと同じように1mあまりになり、現地では定置網や刺網で漁獲されています。市場には鮮魚として空輸されています。今のところ、3種は区別されず、「サワラ」「サゴチ」として取り引きされています。調理方法は日本のサワラと同じで、照焼、塩焼き、味噌潰けなどにします。評判も悪くないようです。
参考資料
Collette,B.B.and C,E,,Nauen.1983.FAO Species Catalogue Vol.2,…
東京都・1997.平成8年東京都中央卸売市場年報水産物編.
農林水産省統計情報部・1997.平成7年漁業・養殖業生産統計年報・
科学技術庁資源調査会編・1995.ピジュアルワイド食品成分表・東京書籍,東京,265pp.
おさかな普及センター資料棺・1997.築地市場おさかな普及センター資料館年報(1996年度)、(16):1


マケレル
    クイーンズランドスクールマケレル
 Scomberomorus queenslandicus (Collette & Nauen, 1983より)


メルルーサ
          

 ファーストフードでフィッシュフライを食ベた時、「この魚は何かな」と考えたことはありませんか。あの自身魚の正体こそがここで紹介するメルルーサやホキといったメルルーサ科の魚です。メルルーサというのはスペイン語で、英語ではへイクといいます。メルルーサは世界で13種知られていますが、その分布域は大西洋、東部太平洋、ニュージーランドで、日本を含むインド・西太平洋には生息していません。水産上重要な種類で、1987年には世界中で160万tほどトロールで漁獲されています。
日本では昭和40年(1965年)頃から輸入されるようになりました。しかし、魚市場や鮮魚店などでその姿を見かけることはありません。フライ用などに加工されて出荷されているからです。メルルーサ類はマダラやスケトウダラなどのタラ類の親戚なので、味は大変たんぱくです。このため、フライの他にから揚げ、バター焼などに向いています。これまで6種類がニュージーランドなどから冷凍品として輸入されています。

参考資料
阿部宗明・1970-1995.新顔の魚・伊藤魚学振興財団.
科学技術庁資源調査会編・1995.ビジュアルワイド食品成分表
東京部・1997.平成8年東京部中央卸売市場年報水産物編
Cohen,D,M,,T.Iwamoto and N,scialabba.1990.FAO…………

メルルーサ
 メルルーサ
 Merluccius capensis (Cohen et al., 1990より)

メルルーサ
 ニュージーランドヘイク Merluccius austalis (Cohen et al., 1990より)

メルルーサ
 メルルーサ6号 Merluccius gayi (Cohen et al., 1990より)



日本に輸入される水産物

 わが国は、平成8年に約345万tの水産物を139の国と地域から輸入しました。10年前と比ぺると約2倍の量です。これは、各国が自国の水産資源を保護するようになったことや、200海里水域内での日本漁船の操業が規制されたためです。この他に国内での水揚げが減少している魚の代用を海外に求めるようになったり、新しい食材が求められているなどの理由が考えられます。
輸入された魚の主要なものはサケ・マス、マグロ・カジキ、ウナギ、タラ、マジェランアイナメ、サワラ、ニシン、ヒラメ・カレイ、シシャモ、アジ、メヌケ、カツオ、ギンダラなどです。これ以外にも今回展示したような「珍しい魚」が輸入されており、正確な種類数はわかりません。
輸入相手国を1位から10位までみると、中国、アメリカ、インドネシア、タイ、ロシア、韓国、台湾、カナダ、チリ、インドの順でした。
参考資料
水達庁水産流通課.1996.水産貿易統計,平成8年1月〜12月・


       日本の水産物輸入量(万トン)乎成8年水産貿易統計より
グラフ

---- 80年前の東京市場の鮮魚 ------
 東京の魚市場は、大正12年9月1日の関東大震災まで日本橋にありました。その頃の日本は、明治に引き続き近代化を進めていましたが、今日ほど流通綱が発達していませんでした。それでも多くの水産物が日本全国から東京に運ばれていたようです。そんな時代の東京市場にはいったいどんな魚が並んでいたのでしょうか。ここでは、大正7年に魚類学者田中茂穂博士によって書かれた報告をもとに見てみましょう。
全体の種類は700種を超え、そのうち食用となるものは370種、重要魚種は200種以上となっています。主要な魚は、カジキ、マグロ、カツオ、サバ、タイ、キダイ、ヒラメ、イシガレイ、マガレイ、アサバガレイ、ネズミザメ、ヨシキリザメアブラツノザメ、ブリ、サワラ、ムツ、アンコウ、シログチ、アジ、ニシン、タラ、マス、トビウオ、メヌケ、サンマ、ネズミゴチと今とほとんど変わりません。産地は、北海道から九州まで全国に及びますが、外国からの鮮魚の輸入はまだなかったようです。
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〜〜〜〜〜 築地市場おさかなニユース 〜〜〜〜〜〜

日本最大級のモンダルマガレイ

 昨年9月11日、三宅島近海で釣られた魚が築地に入荷しました。ハタやフエダイ類に混じって、大きな見慣れないヒラメの仲間がいます。店の人も見たことがないというので、さっそく調べてみると、ダルマガレイ科のモンダルマガレイであることがわかりました。この魚は、南アフリカからメキシコまでのインド・太平洋の熱帯海域に広く分布しています。日本でも、和歌山県以南トカラ列島、奄美、沖縄、小笠原から記録がありますが、三宅島からは初記録で、和歌山とともに分布の北限となります。また本種は40p以上の大きさになることが知られていますが、標本に基づいた記録は数えるほどしかありません。全長44.5pの本個体は、日本最大のモンダルマガレイであると同時に、世界最大級の標本です。このように、この魚は貴重な標本となったわけですが、残念ながら食用としてはあまり利用されていません。したがって市場にはほとんど入荷せず、「珍しい魚」となっています。

参考資料
Amaoka,K,1969.Studies on the simistral flounders found in the waters around japan-taxonomy,anatomy and phylogery,.......
尼岡邦夫・岸本浩和・1996.西表島から得られた日本初記録のミナミヒメダルマガレイ(新称)およびトゲダルマガレイの変態直後の稚魚と幼魚;
中坊徹次編・1993;日本産魚類検索、全種の同定・東海大学出版,東京,1476pp・
Norman,J,R,1934.A systematic monograph of the flatfisher(Heterosomata),Vol.1......................


ダルマ
                    Broussonet (1782)より